特別研究室

ドイツ・ベルリンの地下鉄の紹介

黄色い車体がかわいい地下鉄です。


高架区間をゆく


 ベルリンのUバーンは全部で10路線あり,U1線からU9線までとU55線という名称がつけられていますが,U55線は将来的にU5線と結ばれる予定です。この他,ベルリン市街へ伸びるSバーンとリングと呼ばれるベルリンの市街地を囲む環状鉄道があります。これらにバスとトラムを含めてベルリンの市内交通体系を形成しています。今回の訪問ではベルリンの西側の路線を中心にUバーンのU6とU8を除く全路線に一部または全区間乗車しました(全線完乗はU4とU55線)。料金体系はこれらすべての移動手段で共通ですので,Sバーンを排除してUバーンだけを取り出して紹介することにはあまり意味がないかもしれません。ちなみに,私が使った1日乗車券は6ユーロ30セント(2012年3月現在,約700円)でした。

 Uバーン10路線のうち初期に建設されたU1〜U4線がトンネル断面の小さい小断面規格,U5〜U9,U55がより大きな車体規格の大断面規格で建設されました。車両は小断面規格車両と大断面規格車両に大きく分けられ,それぞれのグループで新旧の車両がみられます。集電方式は大断面,小断面とも第三軌条で共通ですが,集電シューの当て方が小断面では上から第三軌条に当てるタイプ,大断面は下から集電シューを当てるタイプという違いが見られます。路線ごとの車両形式の使い分けはなく,同じ形式の車両が複数の路線で使われています。ラインカラーは路線図と駅名標に使われる程度で色によるライン区分はあまり行われていません。


小断面規格車両(左)と大断面規格車両。
似ているが車体幅の差がおわかりいただけるだろうか。

 ベルリンUバーンの車両はどれも黄色く塗られ,とても目立ちます。電車は乗降客数や路線距離に応じて2両から8両編成で構成され,最も短い2両編成は路線距離の短いU4,U55の両線で使われています。それ以外の路線は6〜8両編成が主流です。旧型車両は2両1ユニット,新型車両は4両1ユニットになっています。私の見た限り,大断面規格車両は2形式,小断面規格車両は4形式ありました。もっとも古いと思われる小断面形式の車両は積み木のような直方体で前面1枚窓,側面は客室2ドアとなっており,他の形式よりも薄い黄色で塗られています。それ以外の形式はすべて3ドア車両となっており,


大断面規格車両2形式。


小断面規格旧型2形式。


こちらも新旧小断面規格車両。

 大断面規格の車両はロングシートとボックス席を組み合わせたセミクロスシート,小断面規格の車両はオールロングシートになっていますが,新型車両ではどちらもオールロングシートになっています。ドアの開閉は開くときはボタンまたはレバーの操作が必要です。戸閉めはパリメトロのようにブザーが鳴ってから自動で閉まります。新型車両は台形型の客室ドア窓が大きな特徴となっています。一部車両の窓にはブランデンブルグ門をモチーフにした模様が入れられており,外の景色は若干見にくくなっていました。なお,車内の通り抜けができるのは新型車両のみです。


小断面規格車両車内。小断面規格車両はロングシートのみ。
写真のどの車両の窓にも模様が入っている。


左:大断面規格車両旧型車の車内。こちらはボックス席もあり。
右:新型車両の台形型ドア窓。

 ベルリンのUバーンは地上走行区間が多く,地上・高架駅は独立した立派な駅舎を持つものが多いです。しかし,駅には改札口もない信用乗車方式で駅係員もおらず,駅舎内には昔出札口があったと思われる窓口(現在は閉鎖)のほか,切符の自動販売機,刻印機がある程度です。駅入口にはドイツ共通の青地に白いU字がかかれたサインが掲げられていますが,これにもいくつかのパターンがあります。地下駅はそれほど深いところを走ってはおらず,階段を下りるとすぐにホームという場合が多いです。



Uバーン入口四様。ドイツ共通の白地に青のUがマーク。



大きな駅舎を持つ駅が多いのがベルリンUバーンの特徴。
いずれの駅もトレードマークのようにUの文字を掲げている。
ちなみに,この中でホームが地下にある駅は右上の駅のみ。

 ホームは8両編成が停まるので,それなりの長さがありますが,ホームには発車案内表示があり,行き先と電車到着までの時間が表示されます。ホーム装飾もあちこちの駅で見られます。乗り換え駅での移動もそれほど大変ではなく,駅によっては同一ホームでの乗り換えができるところもあります。特にU1,U2,U3線の3路線が並走するWittenburg駅−Nollendorf platz駅間はこれにU4線の分岐も加わり,非常に複雑な配線になっています。特にNollendorf platz駅はU1,U3,U4線が地下ホームで上下線2層構造,U2線は駅手前から地上に顔を出し高架ホームとなっており,ホームは3層構造の駅となっています。Wittenburg駅も3面5線構造となっており,ここにU1〜U3線の3路線上下線の電車が発着します。


駅ホームの様子。ホーム装飾の駅も多い。


左:Nollendorf platz駅。上に上がる階段はU2線ホーム,下へ下る階段はU1,U3,U4線ホームへ。
右:Nollendorf platz駅の高架ホームにあるやぐら。Uがとても目立つ。

 ベルリンのUバーンは,東西分割時代には東西に分割され,西ベルリンのUバーンが東ベルリン内を通り,再び西ベルリンに入るといったこともあったようです。この場合,東ベルリン内の駅は一部を除き,通過する措置が採られました。このように,ベルリン地下鉄は歴史の影響を大きく受けた地下鉄です。当時はいわゆる国をまたぐ地下鉄だったわけで,たとえば西ベルリンの地下鉄車両が東ベルリン内を走行中に走行不能となった場合など,運行管理や非常時対応などは特別な配慮が必要だったことでしょう。今ではベルリンの壁もごく一部を残すのみで,ベルリンUバーンも東西に分割統治されていた頃の面影はほとんど見られません。

 全体的な印象としては,まず「絵になる地下鉄」だということ。これは地上走行区間が多く,きれいな鉄道(地下鉄)写真になるところが多いということ。いわゆる鉄道写真の撮影スポットに該当するようなポイントをいくつか見つけることができました。特にU1線の東側終点Warschuer str.駅とSchlesisches駅の間はシュプレー川を渡るオーバーバウム橋が格好の撮影スポットです。これ以外にも,秋葉原駅のように高架でU1線とU2線が直交するGleisdreieck駅,高架から地下への坂を登り下りするU2線Nollendorf platz駅付近など,私が見つけたところだけでも,都心部にいくつか撮影スポットがありました。


U1線とU2線が直交するGleisdreieck駅。
残念ながら2本の電車を同時に写真に納めることはできなかった。


左:オーバーバウム橋を渡るU1線車両。
右:別ポイントから。タイミング悪く赤白模様の清掃車が通ってしまった...

 もう一つ,ベルリンUバーンの面白いところとしては,ベルリン中央駅との接続はU55線のみであるということです。U55線は他のUバーン路線と一切接続しておらず,完全な独立路線になっています。したがって,現時点では中央駅からU55線を乗っても他のUバーン路線への乗り換えはできなくなっています(Brandenburger Tor駅ではSバーンへの乗り換えはできます)。私も中央駅(Hauptnahnhof駅)からU55線でBrandenburger Tor駅まで行き,そこから観光がてらU2線の駅まで10分ほど歩いて移動しました。Uバーンにこだわるとこのようなことになりますが,Sバーンを使えば十分に移動可能ですので,特にベルリンの場合はやはりSバーンとUバーン併せて一つの交通体系となっていると言えるでしょう。ちなみに,ベルリンの山手線に相当するリング線(S41,S42線,この路線はドイツ鉄道管轄だが第三軌条集電方式)も中央駅は通らず,ベルリン中央駅は東京でいうと,飯田橋駅または市ヶ谷駅あたりの位置に該当し,本当に環状鉄道の中心点に中央駅がある感じです。


U55線Hauptbahnhof駅。中央駅なのに地下鉄ホームは閑散としている。


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2013/3/24修正
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