特別研究室

ドイツ・ボンの地下鉄の紹介

トラムと完全互換性を持つ地下鉄です


併用軌道を車と並んで走る地下鉄車両。


 ボン市内を走る地下鉄はUバーンと呼ばれ,同じ経営主体が経営するトラム,バスそれにドイツ鉄道のSバーンと合わせたネットワークを組んでいます。ただし,ボンのUバーンは一部路線がケルンまで乗り入れており,一部路線はかなりの長距離路線となっています。地下鉄といっても,郊外駅では地上を走り,一部路線はトラムと軌道を共用したり,地下鉄専用路線でもホームがトラム並みに低いところがあったりと,完全な地下鉄とトラムの中間的な色合いが濃いものとなっています。

 路線は全部で6路線あり,原則として軌道を共有しています。東京の地下鉄のように原則路線ごとに線路を分けているのとは対照的です(例外としては都営三田線と東京メトロ南北線,東京メトロ有楽町線と副都心線)。線路はボン中央駅付近からしばらくは地下区間で,郊外に行くと地上に出ますが,郊外でも再び一部が地下区間になっているところがあり,電車は地上と地下の出入りを繰り返します。66号線や16号線では郊外区間が単線になり,途中の駅で列車交換が行われます。


左:路線の分岐点。道路上で線路が平面交差。
右:分岐した後は建物の下を通って再び地下へ。


左:単線区間の始まり。右側の線路は留置線となって終わり。
右:単線区間を走る地下鉄車両。

 地下鉄ネットワークとしては隣の都市のケルンともつながっており,6路線のうち2路線はケルンまで足を延ばします。そのため,料金体系はかなり複雑で,行政区を単位にしたゾーン制という感じです。つまり,出発地と目的地の行政区(自治体)ごとに料金が決められており,例えばボン市内から○○市内にある駅だとゾーン2という具合に料金が決まります。一日乗車券などもこのゾーンにより料金が異なるので,乗車には目的地をはっきりさせることが必要となります。つまり,今回私が乗り歩くときも最も遠くに行くのは○○駅までだから,その駅を含むゾーンの一日乗車券を購入することが求められます。今回ゾーン3の一日乗車券を購入しました。ぷらりと行き先を決めずに乗ろうとするとちょっと困る料金制度ですね。

 このほかの切符は1回券,5回回数券などのほか,近距離券という4駅まで有効の切符も発売されています。最近はICカード乗車券を導入する地下鉄が多く,紙の乗車券のみというのは少なくなってきたと思いますが,ボンではいずれの乗車券も最近流行りのICカードなどではなく,旧式の紙切符となり,車内での刻印が必要となります。

 駅の入り口はドイツで共通の青地に白のUマークです。駅の造りはとてもシンプルで,ボン中央駅といった大きな駅でも自動券売機があるだけで,改札機は一切ありません。駅は大きく分けて三つの種類があります。一つは都心部の駅などホームが電車の床面に合わせた高いホームになっている駅で,いわゆる普通の地下鉄の駅です。二つ目に,高いホームと低いホームの二つを持つ駅。高いホームを持つ駅でも,トラムと地下鉄が線路を共有している区間にある地下駅では,トラムの停車するホームは低く,地下鉄の停車するホームは高くなっています。なお,これらの駅ではこれといった装飾が施された駅は見られません。


左:ボンも地下鉄の入り口は青地に白いUマーク。
右:ボン中央駅。造りはいたってシンプル。


左:地上駅。この駅は道路の中央分離帯に位置する。
右:典型的な地下駅。


左:橋の真ん中にある駅。橋の下が入り口だが人気がなくちょっと陰気くさい。
右:ここもホームは道路の真ん中。

 三つ目の駅の種類は,駅のホームがトラムと同じように低い駅です。これらの駅は郊外にあり,これらの駅はトラムの停留所と全く同じで,駅には券売機とホームだけしかありません。駅と言っても歩道の一部が少し高くなってホームとして使われており,もはや駅とは言えないレベルです。これらの駅ではホームはトラムと同じ高さとなり,地下鉄車両から低いホームに対応するステップが出てきて電車へは車両から出てくるステップを使って乗車します。こつまり,地下鉄車両は高いホームと低いホームの双方に対応できるような造りになっており,駅によってドア操作(ステップ出し入れの有無)が異なります。これについては車両の解説のところで詳しく説明します。さらに軌道はトラムと同じような自動車との併用軌道となり,駅のホームを車が通り抜けます。このような駅もほとんどトラムの停留所と変わらないので,これといった装飾がある駅はありません。


左:郊外の駅。地下鉄の駅というより完全にトラムの停留所。ホームは低い。
右:併用軌道なので,駅の中を車が通り抜ける。


左:郊外の駅にあるのは券売機と屋根のあるベンチだけ。
右:郊外の終点駅。ここは高いホーム。

 電車は2両編成が基本単位で,それを2編成連結した4両編成で運転されています。私が確認した限り,車両は2種類あるようです。電源は架線集電方式で,車両はすべて高いホームとトラム規格の低いホームの両方に対応できるよう出入り口ドアとステップに工夫が施されています。低いホームの駅ではドア付近の床が下がって1段ステップができ,さらに車両の外側にもサイドステップのようにもう1段ステップが出てきます。低いホームから車両への乗降は2段のステップを使って行います,一方,地下鉄専用の高いホームではステップの作動はなく,普通の地下鉄と同じようにドアだけが開く仕組みです。いずれの場合もドアを開けるときにはボタン操作が必要ですが,一定時間が経つと自動で閉まるようになっています。

 車内は4人掛けのボックス席が基本で車端部に横掛けの座席が配置されます。2両編成の間では車内の通り抜けが可能で,各編成には自動券売機が1台設置され,切符は車内でも買うことができます。行き先や次停車駅は液晶モニター画面で案内する方式と方向幕式の表示機で停車駅一覧を掲示する古い方式が混在しています。


左:古めの車両。緑色が原色のようだが,車体広告でバリエーションは多数ある。
右:車内はボックス席が基本。


左:新しめの車両。
右:室内ではディスプレイモニターで停車駅を案内する。


左:低いホームでは車両のステップが出てくる。
右:車内には券売機もある。

 ボンの地下鉄は一部区間でトラムと軌道を併用します。そして地下鉄車両は高いホームにも低いホームにも対応できますので,トラムが走る路線はすべて地下鉄車両も走ることができます。このため,地下鉄駅もトラムと全く同じような造りになっているのです。トラムとの軌道併用区間にある駅では,トラムも地下鉄も同じ低いホームを使う場合,トラム用の低いホームと,地下鉄用の高いホームが前後に並ぶパターン,さらにトラムと地下鉄が島式ホームの左右を使い分け,ホームの片側だけが低いホームになるという3パターンがあるようです。

 中央駅から東側への66号線では中央駅を出たらすぐに地上に顔をだし,トラムの軌道が寄り添って合流してライン川を渡ります。この区間は本当にトラムの軌道のように道路の真ん中に2本の線路が敷設され,交差点を4両編成の列車が堂々と通過してゆきます。このような併用軌道もありますし,専用軌道の場合は道路との交差は踏切となります。イメージとしては,都電荒川線に4両編成の地下鉄車両が走っているイメージと京阪電車の浜大津駅付近と言えばわかりやすいでしょうか。

 ブリュッセルはメトロとプレメトロに明確な区分があり,軌道を併用することはありませんし,アムステルダムのメトロもトラム的な地下鉄路線はありますし,ロッテルダムのメトロもデンハーグ中心部でトラムとメトロが路線を共有している事例があります。しかし,地下鉄車両が高低どちらのホームにも対応でき,トラムの全ての路線に乗り入れ可能という地下鉄は初めての経験でした。


左:トラムと共用の地下駅。ホームの高さが違う。
右:手前がトラム用の低いホーム,向こうが地下鉄用の高いホーム。


左:併用軌道内の駅。この駅は道路のど真ん中に高いホームがある。
右:手前がトラム用の低いホーム,向こうの高いホームには地下鉄車両が停車中。


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2015/7/23更新
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