特別研究室

ドイツ・フランクフルトの地下鉄の紹介

緑の車体の地下鉄です。



トンネルを抜けて地上区間へ。


・概要
 フランクフルトは人口約65万人のドイツの中都市です。私が日本からドイツに行く場合、フランクフルト空港に降り立つことが多かったので、これまでもフランクフルトに滞在したことはあり、地下鉄に乗ったことも何度かありました。初乗車は2004年12月でした。しかしながら、その時は同行者がいてよく地下鉄を観察できなかったり、写真が撮る時間がなかったりしたことから、これまで地下鉄レポには掲載していませんでした。今回、2015年8月の訪問の際、ようやくじっくりと地下鉄に乗る時間が取れたので、今回フランクフルトの地下鉄をご紹介したいと思います。

 フランクフルトの都市交通はU1〜U9のUバーン路線のほか、Sバーンとトラムなどと結びついており、Uバーンの駅で配布される路線図もSバーンとUバーンが区別なく掲載されていました。その中で今回はUバーンだけを取り上げたいと思いますが、Uバーンだけを紹介するのでは都市交通全体の一部を紹介するだけになってしまいますことをあらかじめご承知おきください。

 さて、UバーンのU1からU9の路線のうち、U9は都心を通過せず、すべての駅が他路線と共用でU9だけが通る駅はありません。さらに一部時間帯だけの運転ですので、実質8路線と考えてよいと思います。この8路線もいくつかの路線で線路を共有しており、郊外で枝分かれする行き先によって路線名が異なると考えてください。線路の共有度(路線の重複度)からは、大きく分けてU6とU7、U4とU5、U1〜3とU8という3つに分類できるでしょう。


U6とU7の分岐点。この電車はU7線へ向かう。

・車両
 U2、U4、U7などを走る車両はトラムと本格的地下鉄の中間のような車両で、緑色一色の車体です。フランクフルトUバーンの中では一番新しい車両かつ最多勢力のようです。高いホームにのみ対応して、トラムのような低いホームには使えません。車両は各車両ドアが2つの短い車両で、4両編成と2両編成があり、U4は4+4両の8両編成、U7は4両編成の本編成と2両編成の付属編成を併結した6両編成での運行でした。車内はボックス席が基本、背もたれの低いボックス座席が並んでおり、黄色いスタンチョンポールが目立ちます。車内の通り抜けも可能で、車端部には次駅と行き先の表示機があります。U4にはもう1つ旧型の車両も使われていました。前面に正方形に近い2枚のガラスを配した車両で、こちらは観音開きの折り戸の客室ドアになっています。


左:フランクフルトUバーンで最もポピュラーな車両。右:車内はボックス座席。


左:U4のみで見かけた古いタイプの車両。前面は正方形窓2枚。右:車内はボックス座席で窓側にテーブルがある。

 続いてU5用の車両。こちらはボンの地下鉄に似たトラムに近い車両です。この車両だけは高低両方のホームに対応しており、高いホームではステップが平らに、低いホームでは車内にステップができる仕組みになっているようです。傾斜のついた前面窓が奥に入り込んだようになって、まさにドイツのトラムの典型的な顔立ちです。車内には立ち入らなかったので、車内の様子は残念ながらわかりません。


左:U5用車両。地下鉄というよりトラムに近い。右:U5用車両は高低両ホームに対応。

 最後にU6に使われていた車両はもう少し古めの車両で、前面の大きな一枚ガラス窓の平面的な顔が特徴です。外観の特徴としては、折り戸の客室扉が挙げられるでしょう。室内はこちらもボックス4人掛けが基本で、車内の通り抜けも可能です。ボックス席には窓側にテーブルが付いていて、かつての急行型気動車のようです。地下鉄でテーブル付き座席というのはなかなか見られないですね。


左:U6用車両。前面は大きな一枚窓。右:車内はシックなボックス型でこの車両にも窓側にテーブルがある。

・駅
 フランクフルトの地下鉄もドイツ他都市の地下鉄と同じく、Uバーンと呼ばれ、入り口には青地に白字のUがマークになっています。多くの駅では入り口を入ると、コンコースがあり、自動券売機が並んでいます。信用乗車方式なので改札機はありません。コンコースからホームへ下りると、行き先案内の電光掲示があり、路線番号と行き先、到着までの時間が分単位で表示されます。駅は装飾が施されているところもあり、私が見たのは、パリメトロのアールヌーボー入り口が壁画に描かれた駅がありました。本格的な装飾がなくても、多くの駅で内装が統一されているという感じではなく、柱や壁のデザインが駅ごとに異なっていました。


左:入り口マークはドイツ共通の青地Uマーク。
右:こちらの入り口は駅名表示中心。


左:コンコース。信用改札で改札機はない。
右:一応改札口のような柵はあるが、改札自体は全くしていない。


左:ホーム。同一ホームに別路線が発着するので行き先案内表示は必須。
右:SバーンとUバーンの乗り換え階段。SバーンとUバーンの乗り換えも階段を一つ上り下りするだけ。


左:ホーム壁の装飾。この駅は写真による装飾。
右:U6、U7のLeipziger Strasse駅。欧州都市の地下鉄の壁画で装飾されている。写真の壁画はマドリッドメトロ。


左:ホーム入り口にはパリメトロの壁画も。
右:Leipziger Strasse駅は上下二層構造。ホームには吹き抜け部分もある。

・バカンス期間の更新工事
 私がフランクフルトを訪れた8月はちょうど鉄道各線の更新工事の時期と重なっていて、一部の地下鉄路線も区間運休が行われていました。また市内を通り抜けるSバーン(近郊電車)も終日運休で、ホームには工事用車両が留置されていました。実際、市中心部の駅でもお客の数はまばらで、これならSバーンを運休しても何の問題もないと感じました。ヨーロッパではバカンスシーズンに列車を長期間運休させてメンテナンスをするのが一般的で、その代わり通常は週末など24時間運行が行われています。日本のように長期間運休する時期がない分、終夜運転ができないというのと正反対のやり方ですね。


左:Sバーンと並ぶ2面4線の駅のうちSバーン軌道は夏の更新工事中。工事用車両が留置されている。
右:資材を載せた貨車の隣に営業中のUバーン車両が発着。


参考資料:

  • 日本地下鉄協会『世界の地下鉄ビジュアルガイドブック』、ぎょうせい、2015.10。

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    2017/5/13作成
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