特別研究室

ドイツ・ハンブルグの地下鉄の紹介

川辺の港沿いを走ります。



トンネルを抜けて地上区間へ。


・概要
 ハンブルグの地下鉄(Uバーン)は全部で3路線あり,U1線,U2線,U3線と名付けられてい ます。ハンブルグ市内の都市鉄道にはこの他にSバーンと呼ばれる近郊電車があります。 日本での位置づけに置き換えると,Uバーンが地下鉄,SバーンがJR線といったところでしょう か。ただし,Uバーンも地下を走るより高架線や地上を走る距離のほうが長いくらいで,一概に 日本の地下鉄に当てはめることはできませんが,ここではハンブルグのUバーンを地下鉄として ご紹介します。

・路線
 Uバーンのどの路線も地図上では「コ」の字やU字型の路線でU1線とU2線はハンブルグ北西部 から都心部へ南下し,また北東部へ北上するという感じです。U3線は東部から都心部へ西進し 再び東へ向かう路線になります。なお,U1線のみ郊外で分岐しており,どちらの分岐線へも 都心部からの直通列車が運行されています。路線間の直通運転も行われており,私の知る範囲 ではU3線とU2線で直通運転が行われていました。このときの行き先表示は,U3線内はU2線との 接続駅までの行き先を表示し,接続駅でU2線の行き先へ方向幕を変える方式で行われており, 日本のような直通運転先の終着駅までを表示するような方式ではありません。

 ハンブルグのUバーンで地下線を走るのは都心部周辺が中心で,郊外では高架線または 地上線の走行が多くなります。一部の路線ではかなり都心に近づいたところでも高架線で建物 の間を縫っていきます。どの路線も郊外では高架線や切り通しを走るので,景色が見られます が,特にお勧めの路線はU3線のRathaus駅からLandungs-Brucken駅までの区間です。Rathaus駅 から2駅先のBaumwall駅の区間は都心を高架線で通り抜ける区間で,建物の間をすり抜けながら 走るのはなかなか面白いものです。さらにその次のLandungs-Brucken駅までの間はエルベ川に 沿って走り,電車から港に停泊する船や川の様子(ハンブルグ港はエルベ川の河川港)が眺め られます。両駅からは川沿いの観光スポットへは歩道橋を渡ってすぐに出られます。


左:駅から帆船が見える。右:ハンブルグ訪問の時はあいにくの雨だった。

・車両
 使用される車両は2タイプあり,一つ目は比較的新しめの車両,もう一つはステンレス製の 旧型車両です。前者は両開きのドアが各車両2か所ある4両編成で白を基調にしてグレーと赤 のラインが入っています。車内はクロスシートが並び,貫通路は一切ありません。車端部は横 5人掛けの座席になっていてその上部は一面窓がありバスの後部のようになっています。この ため,貫通路はなくても広く編成を見通すことができます。各車両にはモニターテレビが設置 されており,コマーシャルや天気予報,ニュースなどが流され,その下部に次駅表示がされて いました。車内放送はドイツ語が基本ですが,主要駅では英語によるアナウンスもありました。

 一方の旧型車両は3両編成で,外観はステンレスのコールゲート板,オレンジと白の顔, オレンジ色のドアがアクセントになっています。室内は横2+1人掛けのキハ141タイプの座席 配置で,新型車両よりも何となく幅が狭い感じがしました。新型車両のようなモニターは付い ておらず,ドアも取っ手を引くタイプです(新型はボタン式)。運用車両はどの路線でも共通 のようで,路線ごとの使用車両の色分けなどはありません。私が乗った時点で新型車両と旧型 車両の比率は7:3くらいだと思います。新型車両は4+4の8両編成,旧型車両は3+3の6両編成 で運転されることもあります。


左:新型車両。角張った白い車体。
右:旧型車両も似た感じだが,ステンレス製。


新型車両の室内。
左:モニターでは路線案内のほかニュースなども流れる。
右:こちらは内装基調色が青。車端部はバスのようで隣の車両が見通せる。


旧型車両。
左:側面はオレンジのドアとステンレスのコールゲート板が特徴。
右:車内は横2+1人掛けの座席。

・駅
 駅には改札はありません。切符の自動販売機がホームへの通路脇などに設置されており, ここで切符を購入してから乗車します。自動販売機はドイツ語のほか英語などの言語でのガイ ダンスがあり,購入はさほど難しくありません。一部の駅ではホームの高さがかさ上げされ ているところがあり,車椅子やベビーカーの乗車がしやすいようになっています。乗換駅は 基本的に平行に並んだ線路・ホームでの乗り換えとなり,私の乗った区間では札幌地下鉄 大通駅のような直交型の乗り換えはありませんでした。乗り換えも一部の駅では同一ホームで できるように配線が工夫されており,それほど面倒な乗り換えはありません。また,Uバーン 同士だけでなくSバーンとの乗り換えも配慮した配線・設計になっているようです。

 駅の構内には改札口もなく鉄道関連設備としては切符の自動販売機程度で,それ以外は 特段目立った物はありません。構内では軽食堂やキオスクなどが軒を連ねており,駅の中で 日用品や食品さらにはビールなどのアルコール類を買うことができるのはありがたいですね。 駅の入口には青地に白のUマークがあり,Uバーンの駅の目印としてかなり目立ちますが,パリ メトロのようにきれいに装飾された入口はありません。また,Uバーン高架線と主要道路が 交差する高架橋にもUマークが掲げられており,近隣駅までの方向と距離が示されています。 地上駅にはかなり大きな駅舎を持つ駅もあり,この点でもUバーンは地下鉄という感じでは ありません。ブリュッセルのプレメトロ,ハンブルグのUバーンなどを考えると,地下鉄自体 の定義がかなりあいまいになってきますね。


左:ホームの一部は高さが違っている。
右:3面6線の駅構内。手前の2面4線がUバーン,奥の1面2線がSバーン用。


左:ホーム装飾はそれほど凝ったものではない。
右:地上駅の駅舎。大きな青いUサインがある。


参考資料:

  • 日本地下鉄協会『最新世界の地下鉄』、ぎょうせい、2005.6。

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    2008/4/5作成
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