特別研究室

フランス・リヨン地下鉄の紹介

いろんなタイプがありとても楽しめます。


登山地下鉄!


 フランス南部の商業都市リヨンには4路線の地下鉄が走っています。パリメトロに比べどの線も 営業距離は長くなく編成両数も3両が最大ですが、とても特徴ある地下鉄で楽しむことができます。 市内交通機関の運営はTCL(Transports en Commun Lyonnais)という会社が行っており、乗車はパリと 同じく均一料金制で1回1ユーロ50セント(約210円)、トラム・ケーブルカー・バスと共通の 乗車券になります。この乗車券は乗車開始から1時間乗り換えし放題となります。1時間あれば 市内ほとんどの場所に行くことができますので、実質市内は1ユーロ50セントで移動できることに なります。この他、2時間乗車券、一日乗車券や夜間(19時以降)乗り放題の乗車券などを利用すると、 かなり格安で市内交通を利用できます。ほとんどの駅で改札は行われませんが、乗車の際には駅にある 刻印機で刻印することが必要になります。よく駅構内で係員が厳しく検札をしており、刻印がした 切符を持っていない場合には高額の追加料金が取られるようです。

 リヨンもゴムタイヤ併用式の地下鉄が走っています。メトロ路線はA線からD線までのアルファ ベットの路線名を持ち、A線とB線がゴムタイヤ鉄車輪併用式3両編成によるワンマン運転を実施して います。D線は同じくゴムタイヤ鉄車輪併用式ですが、2両編成での無人運転となります。車両の 通行は日本と同じ左側通行でパリとは反対。初めて乗ったときホームで電車を待っていると いきなり背後から電車が来て驚きました。


市内交通機関。この他にバス(トロリーバスも)ある。切符はどれも共通。
ゴムタイヤ鉄車輪併用のメトロ車両(左)、斬新なデザインのトラム(中)、レトロなケーブルカー(右)

 リヨンメトロのパリに比べると芸術的センスはあまり感じられませんでしたが、それでも 日本の地下鉄に比べ、十分にセンスのあるデザインが随所に施されています。ホームとコンコースの 吹き抜けや明かり窓などはあちこちの駅に見られます。乗換えは2路線が乗り入れる駅しかないため、 それほど上下移動もなく面倒ではありません。国鉄との接続駅であるPerrache駅はトラムも乗り入れ ており、地下鉄ホームの隣はトラムのホームになっています。ただ、慣れたら大丈夫なのかもしれま せんが、どの駅も乗換え案内表示が他の表示と同じデザインなのでいまいち目立たず、パリメトロに 比べ間違った方向に行ってしまうことも多かったように思いました。パリメトロにはなかった駅構内 のBGMがあり、セリーヌ・ディオンの音楽が流れていました。かつての札幌地下鉄東西線各駅を思い 出します。また、これまたパリメトロになかった乗車位置目標もありますが、その前に並ぶは誰も いません...


吹き抜けがきれいなD線Garibaldi駅(左)、丸い穴がかわいい(C線Hotel de Ville駅)(右)

 A線とB線の車両は白地に赤いハチマキが入った車両で横長の大きな前面ガラスとライトが札幌 地下鉄の東豊線7000系に似た感じがする車両です。3両編成で車両間の通り抜けはできず、貫通ドア そのものがなく、リヨンの地下鉄車両はどれも同じです。車内の座席配置は2人がけシートが集団 見合い形式に並び、車端部は「コ」の字型に囲む3面シートです。座席の座り心地は大変よく、 パリから乗ってきたTGVの最新型Duplexよりもシートピッチも広く足を伸ばすことができてとても 快適でした。ゴムタイヤ鉄車輪併用式ということもあり揺れも少ないです。

 一方、D線の車両はオレンジ一色の派手な車両です。2両編成で運転台は一切ありません。 先頭と最後尾もダブルデッカーバスの2階席のように正面を向いて前方・後方展望を楽しめます。 車体の両端とも大きなガラスがあり、見た感じ非貫通の両運転台(といっても運転台はない)単行 電車が2両繋がったような感じですが、ライトや連結ホースなどの有無から各車両の両端は同じ つくりではないことがわかります。


東豊線7000系に似たA線・B線用車両(左)、D線車両はオレンジ一色。(中)、前後は展望席。(右)


連結面も一面ガラス。2000系中間先頭車を思い出します。(左)、前方・後方展望は最高。(右)

 さて、話の中で敢えて今まで触れなかったのがメトロC線。今年6月に乗ったサンクトぺテルブルグ の地下鉄もビックリでしたが、リヨンメトロC線もこれまたビックリの地下鉄でした。C線は市内北部の 丘の上にある地区と市内中心部を結ぶ路線で、走行方式はなんとアプト式の登山地下鉄なのです。 5駅ほどの短い路線ですが、始発のHotel De Ville駅を出た電車はいきなりトンネル内の急坂を登り 始めます。次のCroix Paquet駅はトンネルとトンネルの間にある駅で、しかも勾配の途中にあるもの すごい駅。トップ写真にあるようにホームも急坂です。ゴムタイヤの粘着力でも到底太刀打ちできないほどの急坂で、 アプト式に頼るしかないというのが良くわかります。その先次駅の手前までしばらく勾配が続いた後、 丘の上の平坦な地形の地下を走る普通の地下鉄に戻ります。私はHotel De Villeから二駅しか乗って いないので、その先また勾配があるかはわかりませんが、駅から外に出てみた感じだとその先には もう急勾配はなさそうです。

 C線用車両は鉄車輪アプト式でゴムタイヤは使われていません。残念ながら車両に付いている 歯車は見ることができないですが、レール間に敷かれたラックレールがアプト式鉄道であることを証明して います。台車には電磁吸着ブレーキが付いています。編成は2両でワンマン運転で運行されており、 車両外装はD線と同じオレンジ一色です。室内も運転台がある以外D線車両と基本的には似た造りですが、 D線車両のような連結面の大きなガラスはありません。C線は急坂を登り下りするので立っていると とても疲れます。特にHotel De Ville行きが下り坂の途中にあるCroix Paquet駅に停まる際は本当に 倒れないよう気をつけなければなりません。


C線Hotel de Ville駅。レールの間に1本のラックレールが見える。(左)
Croix Paquet駅。とても地下鉄の駅とは思えない。(中)
Hotel de Ville駅にある展示(右)


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2006/1/1修正
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