特別研究室

イタリアミラノ地下鉄

観光には便利な交通手段です。



ミラノ中央駅内のメトロ入り口


・概要
 ミラノのメトロはM1、M2、M3、M5の4路線のネットワークで、4号線(M4)はありません。地下鉄のほか、トラム、バス、鉄道との統一ネットワークを形成してミラノの都市交通を担っています。メトロの1号線、5号線が第三軌条集電方式ですが、2号線、3号線は架線集電方式を採用しています。ラインカラーがあり、1号線が赤、2号線が緑、3号線が黄色、5号線は紫です。ラインカラーはホームや車両にも使われており、路線ごとに車両の外観やホームの配色が異なります。料金はゾーン制で、1回乗車券のほか、10回回数券、24時間券、72時間券などの切符もあります。


3線で運用される形式3兄弟。下の解説では1B、2B、3Bに相当する車両。ホーム長が編成ぎりぎりで写真撮影にはかなり苦労した。

・車両
・1号線
 1号線の車両は第三軌条方式での集電ですが、車両工場の出入場時に使うパンタグラフが装着されています。1号線を走る車両は3種類、どれも6両編成で運用されています。まず最新型の車両は(ここでは仮に1A型とします)、赤と黒の塗装が斬新なごく最近導入されたと思われる車両です。前面は黒い顔にアクセントとなる赤いラインが周辺を囲む特徴的な顔をしています。車内は白を基調とした配色でシンプルな感じですが、座面が赤いベンチのような波型の座席が特徴です。座席はすべて横掛けで、冷房装置があり、6両全て貫通式で車内の通り抜けが可能です。

 次に新しい車両(1Bとします)は2号線、3号線で使われる車両とほぼ同じ外観をしており、ラインカラーだけの違いのようです。これも6両編成で車内の通り抜けが可能で、冷房装置も設置されています。こちらはガンメタル(ダークグレー)の塗装に前面・側面とも窓回りが黒、そしてドアと前面にアクセントとなるラインカラーの赤が入れられています。車内は横掛け座席で、ライトグレーを基調とする内装になっています。車内にはモニターが付いており、次の停車駅や乗り換え案内などが表示されます。

 最後に一番古いタイプの車両(1Cとします)。これは前面の曲面ガラスが特徴の車両で、2号線にも似た車両があります。こちらも冷房装置付きの3+3両の6両編成で車内の通り抜けはできません。外観は白が基調でラインカラーの赤い帯が巻かれ、帯にはライン番号の1と書かれています。車内も横掛け座席が並び、手すりや保護棒も赤で塗られています。


左:仮称1A型車両。最新型の車両で外観も黒を基調とし、とてもおしゃれで斬新。
右:1A型車両の車内。座席はFRPの波型ベンチでクッションは一切ない。


左:1B型車両。他線用の車両とはラインからのアクセントのみの違い。
右:1B型車両の車内。車両間の通り抜けが可能。


左:1C型車両。最古参のようで丸みを帯びた顔が札幌地下鉄2000形を思い起こさせる。
中:側面には1号線の1が描かれている。
右:1C型車両の車内。ラインカラーに合わせた赤いスタンチョンポール。

・2号線
 2号線の車両は2種類あり、どちらも1号線車両と似た車両ですが、集電方式はパンタグラフ集電になっています。2号線を走る新しいほうの車両は(ここでは2B)、1Bと似た車両で、1B型と同じく6両編成貫通型。外観ではラインカラーの違いでアクセントカラーが緑になっている程度の違いです。車内も1B型とほぼ同じです。続いて古いほうの車両(2C型とします)は、1号線の1C型と似ていますが、こちらもラインカラーである緑の帯をまとっています。1C型と同様の曲面ガラスが特徴の3+3の6両編成ですが、1Cと異なり冷房はついていません。またこちらの2C型車両は帯の巻き方や前面の塗り分けが1C型とは異なり、さらに2C型には外装塗装が2種類あります。一つは白を基調として腰に帯を巻くタイプ、もう一つは銀色を基調色として鉢巻のように緑のラインを回しているタイプです。銀塗装車両と白塗装車両を併結した6両編成もあったので、どちらも塗り分けの違いで同じ形式のようです。あと、内装は1C型と異なり、車端部に枕木方向に向いた座席が8席分だけあり、また横掛け座席部分には欧州の地下鉄では珍しい網棚が設置されています。さらに、これも1Cとは異なり、車内にラインカラーである緑を配色するような措置は取られていません。


左:2B型車両。外観はグレーの車体にラインカラーの緑をアクセントに使う。


左:2C型車両。1C型車両と違い、架線集電方式を採用している。
中:2C型車両には2種類の塗装がある。塗り替え中なのかもしれない。
右:2C型車両の車内。車端部に枕木方向向きの座席がある。

・3号線
 3号線には2種類の車両が走っています。新しいほうの車両は1号線1B型、2号線2B型とほぼ同じ車両(ここでは3B型とします)です。こちらも6両編成の冷房装置付き、車内の通り抜けが可能であることなどは同じで、ラインカラーである黄色をアクセントとして外装に使っていることくらいしか他路線の車両とは違いがありません。もう一つの車両はどの路線でも見たことのない3号線独自の車両です(ここでは3D型とします)。この車両の側面は1C、2Cと似ているのですが、前面は大きく異なり、曲面ガラスではなく大きな平面ガラスを使う直線的なデザインになっています。車内は3+3の6両編成の非冷房車両で、車両間の通り抜けはできません。外装は黒顔の前面に黄色いラインカラーが入り、側面は白塗装に上下に黒ライン、真ん中に黄色のラインが入る形です。車内は横掛け座席で、手すりや保護棒は黄色く塗られています。車両銘板によると、1990年頃に導入された車両のようです。


左:3B型車両。外観はラインカラーのアクセントのみの違い。
右:3B型車両の車内。1号線、2号線車両とほぼ同じ。


左:3D型車両。日本の通勤型車両に似た黒顔の平面的なデザイン。
右:3D型車両の車内。冷房付きと非冷房車あるが、非冷房車の割合が圧倒的に高かった。

・5号線
 最近できた5号線は他の3路線と全く運行システムが異なります。まず運行は無人運転ですべての駅に天井まであるホームドアが設置されており、車両の撮影には苦労しました。車両は4両編成で車内はボックス座席が基本形になっています。最前部・最後部は展望席になっていますが、この部分の側面には窓がないため、前しか見ることができません。車体は白で側面に紫のラインカラーがありますが、ホームドアあるため、あまり目立ちません。


左:5号線車両。ホームドアがあり、車両を撮影するのはかなり難しい。
中:車内の様子。他路線の車両とは異なり、ボックスシートが中心。
右:前方展望席。横には窓がないので前しか見えない。

・駅
 入り口の目印は赤いMマークで、階段を下りると自動券売機が何台か並んでいます。改札口には改札機があり、切符を通して切符を取るとゲートが開く仕組みです。紙の切符以外にQRコードを利用したスマホでも乗車できるようです。ホームはどの駅もラインカラーの帯が壁面に配置されています。ホームは6両分ぎりぎりなので、写真を写すのはとても苦労しました。ホームや駅構内にこれといった装飾は見当たりませんでした。5号線の駅は最近開業した路線なので、斬新でエスカレーターなどの設備も充実していました。新しい分、地下深いところを通っているのはどこの都市でも共通のようです。なお、5号線の一部の駅は私が乗車した2015年8月の時点で通過扱いとなっていました。


左:駅入り口。赤いMマークが目印。
中:コンコースにある券売機。
右:自動改札機。IC、QRコード、磁気の3種類の切符に対応する。


左:駅ホームに特別な装飾はない。各駅ホームの壁にはラインカラーの帯がある。
中:2号線のガリバルディFS駅。このホームは本来島式で、右側には線路が敷けるスペースがあるが、今は装飾スペースになっている。
右:同じガリバルディFS駅の5号線ホーム。5号線の各駅にはホームドアがあり、他路線のホームとはかなり違う雰囲気。


参考資料:

  • 日本地下鉄協会『最新世界の地下鉄』,ぎょうせい,2005.6。

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    2017/1/2作成
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