特別研究室

ノルウェー・オスロの地下鉄の紹介

地下鉄としては世界一の車窓でしょう。



地下鉄の車窓とは思えないよい景色。


・概要
 オスロの地下鉄はT-Beneと呼ばれており,地下鉄入り口にはTのマークが掲げられています。地下鉄のイニシャルには,ドイツ語系の国ではU-BahnのU,”Metro”という呼び名を使う国はM,そして英語の”Subway”のSと,U,M,Sを使う国が多いですが,Tというのは珍しいと思います(東京では営団時代はS,東京メトロになってからはMに変わりましたね)。

 オスロの全部で6路線あり,都心部に6路線すべてが通る区間があります。都心を囲むように環状線があり,4号線と6号線は相互乗り入れのような形になっています。つまり,4号線で郊外から来た電車は都心部の途中の駅で6号線になってまた郊外へ向かいます。その際面白いのは,α上に環状線を1周半すること。1周半している間に4号線から6号線にかわるのです。ただし,私が訪れたときは環状路線の一部が工事中で,環状運転は行われておらず,4号線と6号線の相互乗り入れも行われていませんでした。地下区間は長くなく都心部の一部だけ。郊外に行くと電車は地上区間の走行となります。


左:駅のマークはT。右:ムンク美術館最寄り駅。

 切符はIC乗車券で,定期券だけでなく1回券などもICチップの入った切符です。運賃はオスロ市内が含まれるゾーン1の一回券が50ノルウェークローナ(2014年8月現在約900円)と日本円で換算するとかなり高価になります。私は24時間券(90クローナ,1600円)を購入しました。切符は改札機のIC読み取り部にかざして入場の処理をします。出場の際には特に何もする必要がなくそのまま改札機を通り抜けていいようです。


左:改札は基本的に入場時だけ。右:郊外の駅は券売機とICリーダーだけのシンプルな造り。

・車両
 車両は全路線共通で私の見た限り1種類しかないようです。白い車体に前部と客室ドア部分が黒く塗られた新しめの車両で3両1編成になっています。車内は車端部が横掛け4人分のロングシート,ドア間がボックスシートになっており,車幅が広いのでボックス席は一部が2+3の横5列と新幹線並みの座席配置になっています。車両間の通り抜けも可能です。

 3両編成の編成を2つつなげた6両編成での運用が多いようですが,1号線は近郊区間でのホーム長の関係からすべて3両編成で運転されています。1号線のほかにも一部3両編成での運転される列車が見られました。


左:白と黒のシンプルな外装。右:多くの路線では3+3の6両編成。


左:車内は横2+3のボックス席。右:車端部は横掛けの座席。

・駅
 駅の入り口はTが目印。駅構内には自動券売機と改札機がありますが,改札機脇には自由に通り抜けられる通路もあり,改札機の通過が必ず必要なわけではありません。見ていると,改札機に切符(ICカード)をかざさずに通り抜ける人のほうが多いようです。地下区間が短いので,地下駅はあまり多くないのですが,オスロ中央駅とつながる駅は地下駅の中でもかなり大きいほうでしょう。

郊外の地上駅はホームに券売機とIC読み取り機があるだけのシンプルな構造で独立した駅舎を持つ駅はあまりありません。駅というより電停といった感じで,中にはホームが木造の駅もありました。


左:建物入り口。右:ホームは線路間に広告モニターが並ぶ。


左:郊外の地上駅には踏切もある。右:都心部の大きな地上駅。

・登山地下鉄1号線
 T-Beneネットワークの路線でとても面白いのは1号線の北西区間。この電車はまるで箱根登山鉄道のように山に登っていきます。以前,リヨンの地下鉄ではアプト式の急こう配を登る電車を登山地下鉄と紹介しましたが,それとは別の意味で本当に山登りをする登山電車です。

 環状区間から分かれると途端に徐々に上りこう配になり,急カーブと急こう配になります。途中駅のホームも短くなり,3両編成の電車は前2両しかドア扱いをしなくなります。途中踏切も何か所かあります。アムステルダムの地下鉄などは踏切のある区間では架線集電方式に切り替えるので,第三軌条方式での踏切は珍しいほうだと思います。


左:1号線の北西部は急カーブが続く山登り路線。右:3両編成でも最後尾車両から先頭が見える。


左:登山区間ではホームは2両分。最後尾のドアは閉鎖される。右:景色は最高。

 車窓の景色も素晴らしく,遠くにオスロの市内や入り江が見え,さらに木々の間から池や湖も見えてきます。車窓の美しさは世界の地下鉄の中でも最高だと思います。終点駅の周りには民家は一軒もなく,登山やハイキングをする人しか利用しないような駅です。どうしてこんな山の上まで地下鉄を延ばす必要があったのか,日本では考えられないほどの山奥の終点駅でした。

 とにかく,景色のよさ,区間内の高度差からいうと世界最高の地下鉄となるでしょう。オスロではまた面白い地下鉄に乗ることができました。


左:第三軌条集電でも踏切はある。右:終点駅の周りには民家や建物は全くない。


参考資料:

  • 日本地下鉄協会『世界の地下鉄151都市のメトロガイド』,ぎょうせい,2010.3。

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    2015/5/1作成
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