特別研究室

サンティアゴの地下鉄

パリと同じゴムタイヤ鉄車輪併用式です。



MP89と同じ外観のサンティアゴメトロの車両


・概要
 南米チリの首都、サンティアゴの地下鉄は支線を含めて全部で5路線あり、路線名称は1号線、2号線、4号線、4A号線、5号線で、3号線はありません。このうち4号線、4A号線を除く1、2,5号線の各路線でパリメトロと同じゴムタイヤ・鉄車輪併用式が採用されています。ラインカラーは1号線が赤、2号線がオレンジ、4号線が青、4A号線が水色、5号線が緑になっています。料金体系は時間帯により早朝夜間、平日朝夕ラッシュ、日中の3つに区分されており、ラッシュ時が最も高く、早朝夜間が最も安くなっています。料金は均一制で、平日ラッシュ時が720チリペソ、日中が660チリペソ、早朝夜間が610チリペソで、1回の乗車で120分有効です。近年の乗客の増加による混雑に設備が追い付いていないようで、ピーク時料金の設定のほか、この後に説明する駅通過措置、車両の増結などが行われています。


右:日中13:30頃の駅。すでに乗客がいっぱい。軌道はパリメトロと同じゴムタイヤ鉄車輪併用式。
左:郊外の高架区間。最後尾車両から撮影。

・車両
 車両は1、2、5号線がパリメトロ方式のゴムタイヤ鉄車輪併用方式、4号線、4A号線だけが鉄車輪方式を採用しています。まず、1号線のゴムタイヤ車両はMP89と同型の車両が使われており、車内通り抜けが可能な7両編成です。この車両は、電車のサウンドもMP89と全く同じで、まるでパリにいるかのような錯覚に陥ります。ただし、ドア縁に危険喚起のためにトラテープが貼ってあるなど、パリメトロから比べると、おしゃれ感はあまりありません。また、1号線ではこのほか一番新しいスペイン製の車両も運用されており、この車両は9両編成と徐々に編成が長くなってきたことがわかります。2号線では、パリメトロのMP73に似た車両が6両編成で運用されているほか、ブラジルアルストム製の車両が8両編成で運用されています。そして5号線では、1号線と同じ7両編成のMP89同形式の車両と、2号線と同じMP73似の車両の2種類が走っています。このMP73似の車両は、2号線とは異なり、中間先頭車を含む5+2の7両編成で、乗客の増加に合わせて増結したように5両基本編成に中間車+先頭車の2両が付いています。いずれの路線でもパリメトロよりも長い7両から9両で運行されており、乗客の多さが窺えます。傾向としては,旧来からのフランス製の車両がスペイン製やブラジル製の車両で長編成化の上,置き換えられている感じです。

 一方、鉄車輪車両を使う4号線、4A号線では、ブラジルアルストム製が使われており、4号線は4+4の8両編成、4A線は4両編成になっています。この車両は2号線を走る8両編成の車両と外観は同じで、走行方式と色の塗り分け(2号線用は青、4・4A号線用はオレンジ)だけの違いのようです。4号線、4A線とも都心に直通する路線ではなく、郊外を走る路線なので、あまり混雑度は高くないようです。車内はドア周りに横掛けの1人席が4席配置され、ドア間の窓部分には2人掛け座席が枕木方向に、横掛けの1人掛け座席のほうを向いて配置います。つまり、日本のセミクロスシートのボックス席を反対に向け背中合わせにした感じで、その向かい側は4人掛けの横掛け座席となる左右非対称の複雑な座席配置です。座席自体はオレンジ色のFRP製で、日本のような柔らかいクッションはありません。


左:1号線、5号線を走るパリメトロMP89と同形式の車両。
中:ドア縁にはトラテープ。あまり見栄えはよくない。
右:車内の様子。横2+1のボックス席でパリメトロMP89とほぼ同じ。


左:5号線を走るパリメトロMP73に似た車両。特にライト周りはそっくり。
中:5号線用は中間先頭車を含む5+2両編成。もともと中間車でも車両間通り抜けはできないので、中間先頭車でもあまり影響がない。


左:2号線用のMP73似の車両。1号線用と形は同じだけど,こちらは6両編成で塗り分けが違う。
右:車内。こちらはパリメトロとは異なり,ドア脇に横掛け1人席が配置される。


左:1号線のスペイン製車両。サンティアゴメトロ最長の9両編成で走る。
右:スペイン製車両の車内。ドア窓はとても大きい。


左:2号線のブラジルアルストム製車両。8両編成でラインカラーはオレンジだけど外装は青。
右:4・4A号線のブラジルアルストム製車両。こちらは鉄車輪。外観は左のゴムタイヤ車両とかなり似ている。

・駅

 駅の入り口サインは「◇◇◇」のスリーダイヤです。階段を下りると出札口、改札口があり、自動券売機のほかに有人の出札口もあります。改札口前にはどの料金が適用されているのかを示す表示板があります。駅内・ホームの装飾は特段大きくて目立ったものはありませんが、一部の駅では壁面にオブジェが飾られていたりして、駅自体はきれいなデザインです。それぞれの駅で構造やデザインが違っており、規格に則った画一的なものではありません。特に長い編成の電車が走る1号線はホームも長く、東京の地下鉄のような雰囲気です。料金が均一制なので、改札口は入るときが回転バー式、出るときは単に扉を押し開くだけのシンプルな構造です。


左:入り口のサイン。赤いひし形が3つ並ぶマーク。
中:大きな駅の入口。入口上部には運行情報を示す表示がある。
右:夜に輝く3つのダイヤ。


左:コンコース。改札口は入り口が機械、出口は扉だけ。
中:コンコースの自動券売機。
右:PUNTA(ピーク),MALLE(通常),BAJO(閑散)どの時間帯かを示す表示。時間帯ごとに適用料金が異なる。


左:コンコースからホームを眺める。サンティアゴメトロはこのような吹き抜け構造の駅が多い。
中:ホームには一部壁画などの装飾がある駅が多い。
右:2号線の終端駅。階段を使って4A線に乗り換えできる。

・ラッシュ時の駅通過

 チリメトロの面白いところは、朝夕ラッシュ時に駅を通過する列車が設定されることです。1号線、4A号線を除く各路線では、各駅は緑ルート駅、赤ルート駅、緑赤共通駅に区分され、電車は緑駅にのみ停車する電車と赤駅のみに停車する電車が交互にやってきます。緑赤共通駅は主要駅・乗り換え駅を中心に設定されています。各駅には駅名標のほか、その駅が緑ルート駅なのか、赤ルート駅なのかを示す表示があります。また、車両にも前面と側面にそれぞれの色の表示を点灯させて、どちらのルートの駅に停まる電車なのかを示しています。特に急行と普通という区分ではなく、単純に停車駅を2つに分けて乗客を分散させる方式は私も初めて見ました。逆に言うと、それだけ乗客が多いということのようです。サンティアゴメトロも乗客の増加が続いているようで、今後も変化が続くものと思います。混雑緩和のため停車駅を分けるという方式は初めて知りました。


左:次に来る列車が赤駅停車か緑駅停車かを表示する案内板。
中:車内の表示。赤駅,緑駅,共通駅の3種類の駅がある。
右:駅の表示。この駅は共通(COMUN)駅。


参考資料:

  • 『地球の歩き方'08〜'09アルゼンチン チリ』,ダイヤモンド社,2007.10。
  • 日本地下鉄協会『最新世界の地下鉄』,ぎょうせい,2005.6。

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    2016/9/17作成
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