特別研究室

ブラジル・サンパウロ地下鉄の紹介

地下鉄網は整備途中段階です。



結構利用者は多く,東京並みの混雑度だった。


・路線
 南米最大の都市ブラジル・サンパウロは,人口1100万人と東京並みの規模でありながら, 地下鉄など公共交通機関の整備は遅れており,地下鉄も現在まで4路線を持つのみで, 路線名で言うと,1号線,2号線,3号線,5号線です。そのうち5号線は現在のところ都心まで 達しておらず郊外地区のみの運行となっていますが,現在延伸計画が進められており, 開通すれば1号線,2号線と接続する予定です。また,番号の抜けている4号線は建設工事中で 都心部から3号線,2号線に接続し郊外に至る路線となり,さらに1号線と4号線に接続する6号線 も建設が計画されています。


サンパウロ都市圏の鉄道網。
中央の垂直の路線が1号線,真ん中下の緑の逆J字線が2号線,
真ん中の赤い線が3号線,左下の紫色の短い水平線が5号線。その他はCPTMなどの路線。

 このように,サンパウロの地下鉄は未だ整備区間が多く,現在までの開業区間だけでは 利便性が高くありません。そのため,サンパウロでは地下鉄以外にも,郊外電車,路線バス などが公共交通機関と位置づけられ,特に郊外電車(CPTM)はサンパウロ都市圏を広範囲に カバーする鉄道として利用されているほか,地下鉄を補完するように都心にまで乗り入れて います。


左:近郊鉄道CPTM。経営母体は地下鉄と同じらしい。
右:路線バス。中央分離帯にバス停がある所もあるので,ドアは両サイドにある。

・料金
 料金は1回2レアル40セント(2008年11月現在,約120円)の均一となっており,この 料金でサンパウロ都市圏のCPTMからの利用も可能です。この他,地下鉄とバスの乗継券も あるようです。切符は通常の磁気券のほか,IC乗車券もあります。検札は入場時のみで, 出場時は回転バーを回して出る仕組みです。1回券の場合は入場の際に切符が回収されます。


改札口。切符は入場時のみ挿入。

・車両
 今回,私が乗車したのは1号線と3号線のみでしたので,地下鉄全体の車両運用や形式までは わかりませんが,1,3号線は6両編成の4ドアのステンレス車両でした。双方の路線で使用され る車両形式や外観も異なりますが,前面が青く赤い帯が巻かれていることは共通です。1号線 車両は運転席部分以外に窓のないサンフランシスコ地下鉄(BART)のようなタイプ,もう一方 の3号線の車両は正面が大きな一枚の窓で構成されたリスボンの地下鉄に似たタイプでした。 外観では,車いすなどが乗る先頭車両最前方および最後尾車両最後尾ドアだけは青く塗られ, 車いすマークが大きく描かれています。


左:1号線車両。暗くて見にくいが,正面左に窓一枚の顔。
右:3号線車両。こちらは大きな一枚窓の正面。


左:車体側面。ステンレス製でドアは4つ。
右:先頭車最端部のドアには車椅子のマーク。

 車内は横掛け座席と枕木方向の座席との両方で構成され,日本の車両のようにボックス席 を構成するのではなく,ドアのほうを向いて座るタイプの座席配置になっています。結構な混雑 になりますが,つり革はなく立ち客はスタンチョンポールとつり革に代わりになる水平バーに 掴まって身体を支えます。乗務員は運転士だけのワンマン運転です。また,乗客は車両間の通り 抜けができません。


3号線車両車内。1号線車両も基本的に同じ座席配置。

・駅
 駅の入口には矢印マークのポールが立っており,地下鉄の駅があることを示しています。 矢印マークは地下鉄のシンボルとして,地下鉄接続の路線バスの方向幕にも行き先の印として 利用されています。駅に入ると切符売りの窓口や売店などが並ぶコンコースがあり,改札口を 通るとホームへ降りる階段またはエスカレーターへ続いています。また,各駅に芸術的装飾が 施され,ホーム壁の装飾や壁画の他,コンコースにモニュメントが置かれている駅もあります。


左:Liberdade(リベルダージ)駅のメトロサイン。上下の両矢印がメトロのマーク
右:Se(セ)駅の構造。上からコンコース,3号線ホーム,1号線ホーム。


3号線Barra Funda(バハフンダ)駅のホーム装飾。

 駅の構造の特徴としては,まず乗降客の多い駅を中心に乗車ホームと降車ホームが別れて いる駅があります。たとえば,1号線と3号線の乗換駅であるSe(セ)駅の1号線ホーム には,上下線とも両側にホームがあり,対向式−島式−対向式の3面2線の形態になってい ます。降車客は島式ホームに降り,乗客は対向式ホームから乗車し,動線を分ける工夫が なされています(下図参照)。ただし,特に混雑時など降車ホームから電車に乗り込む人も いて(これに文句を言う人はいません),乗降客を完全に分けるまでにはなっていないよう です。


左:乗降の分かれたホーム。人のいない真ん中のホームが降車用, その向こうの人がいるホームが反対方向の乗車用。
右:3号線Republica(ヘプブリカ)駅には使われていないホームがある。

 また,もう一つの特徴として,いくつかの駅では乗車ホームに柵が設けられ,乗車位置と ともに乗客の並ぶ方向も決められています。ホームドアこそありませんが,乗車位置以外は 柵で仕切られ,誤ってホームに転落するのを防いでいます。サンパウロの地下鉄は結構な混雑 となり,大量の乗降客がいる駅ではこのように乗客をコントロールしているようです。さらに, トイレが設置されているのも特徴としてあげることができます。日本ではごく当たり前の駅 トイレですが,ヨーロッパやアメリカでは地下鉄駅にトイレが設置されている例はあまり多く ありません。その点,サンパウロの地下鉄は各駅にトイレが設置されており,無料で自由に 使うことができます。駅にトイレがあることが当然の日本人にはありがたい設備ですね。


左:乗車用ホームには柵があり,並ぶ方向が決められている。
右:駅構内のトイレ案内。ちなみにサインの下に並ぶ緑のタマゴは公衆電話。


参考資料:

  • 『地球の歩き方'06〜'07ブラジル・ベネズエラ』ダイヤモンド社,2007.1。
  • 日本地下鉄協会『最新世界の地下鉄』,ぎょうせい,2005.6。

  • 特別研究室へ戻る
    入り口へ戻る

    2008/11/23作成
    inserted by FC2 system