ロシア・サンクトペテルブルグの地下鉄の紹介

とにかくすごい地下鉄でした。


立派な駅入口。駅構内は写真撮影禁止です。


 ロシア第二の都市,サンクトペテルブルグの地下鉄に乗ってきました。最初にお断りして おきますが,駅構内は一切写真撮影禁止なので写真は上の入り口の写真一枚しかありません。 ですが,私が今まで乗ったどの地下鉄とも違う独特の運営方式や設備を採用しているので, 文章だけででもご紹介したいと思います。

 まず,サンクトペテルブルグの地下鉄は1号線から4号線まで4路線あります。ライン カラーは1号線が赤,2号線が青,3号線が緑,4号線がオレンジ色です。しかし,ホームなどで 識別のための色分けは行われておらず,ロシア語表記の案内図といい,とにかく乗るのには 苦労しました。私の乗ったのは,そのうちの1号線と3号線の2路線,ほんの数駅の区間だけ でしたので,全体を把握することはできませんが,結構な営業距離があると思います。駅間は 都心部でもかなり離れており,最低でも1.5km以上はあったと思います。運転頻度はかなり高く, 日曜でも3,4分間隔くらいと東京の山手線並みです。また,夕方のラッシュ時間に乗ったとき には,車内・ホームともかなり混雑していました。札幌の夕ラッシュと同じかそれ以上でしょうか。

 料金は一乗車10ルーブル(約40円)と日本から比べるととても安いです。地下鉄は全線全区間 均一料金制を採用していますので,どこまで乗っても10ルーブル以上はかかりません。均一料金制 のため,降車駅では改札がなく,乗車時に回転バー式の改札口を通るだけです。あとで触れますが, 入口と出口は完全に分離されており,エスカレーターが設置されているため,出口から逆流して 無賃乗車することは全く不可能です。

 ちなみに,地下鉄での治安ですが,ツアーガイドの人からは注意してくださいと言われましたが, 数駅間,4回くらいの乗車では怖い思いをしたことは一度もありませんでした。当然,鞄を開けた ままにするなど日本のように全くの無警戒ではスリに餌を撒いているようなものですが,ちょっと だけ警戒モードを高めていれば問題はないのではないでしょうか。利用者も私が迷っているのを見て 英語で話しかけてくれましたし,こちらから英語で尋ねたときも親切に教えてくれました。 私の行った時期は夜も白夜で明るく(夏至の日もちょうどサンクトペテルブルグに滞在していました) 夜遅くの利用も昼間と特段変わるところはありませんでした。ただ,白熱灯の車内は薄暗く, 駅到着時一時的に照明が消えるので,慣れないうちはちょっと不安になるかもしれません。

 地下鉄に乗るには,窓口でジェトンというコインを買います。一回の乗車でコイン1枚が必要で, 均一料金制でコイン1枚は10ルーブル(約40円)でした。これが切符の代わりで回転バー式の 改札機にコインを入れると通ることができます。この他,回数券のようなカード式の切符も あるようですが,買わなかったのでいくらなのかもよくわかりません。改札は入場のときのみで 出場時はありません。入場者と出場者は明確に区分され,両者は柵で区切られています。 入場側の改札機からはそのまま下りエスカレーターに乗客の動線が流れるようになっています。 ホームと入り口がエスカレーターで直接的に結ばれているので,出入り口の数は多くありません。 札幌地下鉄で大通やさっぽろに相当する中心部の駅でも多くて数か所で,私が何度か利用した郊外 の駅は1か所だけでした。

 改札機を入ると,いきなり驚かされるのは長ぁぁぁぁぁいエスカレーター。全く東京の地下鉄の 比ではありません。ネヴァ川という比較的大きな川の下をくぐるというのも理由かもしれませんが, かつて地下鉄が核シェルターの役割をしていたという話は本当なのかと思いました。150mはあろうか というエスカレーターでずーっと地下深くまで下りてゆきます。エスカレーター以外の階段はなく, ここでも乗客の流れはきれいにコントロールされています。エスカレーターの終点では怖そうな駅員 のオバサンが監視カメラでエスカレーターの乗客を監視していました。脇には禁煙と撮影禁止の マークがバシッとはってあります。写真など写していたら呼び止められたでしょう。ホームと改札階 は長いエスカレーター1本でつながっており,東京のようにエスカレーターを何本も乗り継ぐことは ありません。駅はシールドトンネル2本の間にホームがあるタイプで,太い角柱の柱が点在し, ホームから線路側のそれほど見通しはよくありません。ホーム端には,前の電車が発車してからの 時間が秒単位で表示され,だいたい4分くらいで次の電車が来ていました。ストックホルムは次の 電車が来るまでの時間を分単位で表示していましたので,それぞれの国のやり方があるのでしょうね。

 乗り換えた3号線のホームはもっと驚かされました。エスカレーターを降りるとそこには,柱 と柱の間に窓のない鉄の扉が並んでいる通路に出ました。まだホームは先だと思っていたのですが, 何と今立っているこの場所がホームで,並んでいる鉄の扉はホームドアだったのです!当然柱の部分 にも窓はなく,ホームにいると線路は一切見えません。電車が来たことは音と扉からの隙間風でしか 判断できません。上手く説明できませんが,ちょうどエレベーターの扉を想像してもらえばよいかと 思います。あの扉よりもっと頑丈で黒塗りの扉が150mくらい果てしなく等間隔に横一列に並んでいる と言えばよいでしょうか。電車が到着して鉄扉が開くまで一切車両を見ることができません。

 扉が開いても車両も扉周辺の部分だけしかみえないため,いったい何両編成なのか,編成のどの 位置が空いているのかなどは全くわからなくなっています。発車時は,まず電車の扉が閉まり, 数秒後にホームの鉄扉が閉まりその後発車となります。日本の地下鉄のように電車とホームの扉が ほぼ同時に閉まるということはありませんでした。幸い?電車には窓が付いていましたが,トンネル も駅も窓から見えるのは,コンクリートの壁だけ。駅名標などは一切ありません。ですから,電車に 乗ってしまうと,自分が今どの駅にいるのかは,ロシア語の放送に頼るしかない状態です。 ちなみに,乗り換えの際,ホームを通り抜けた2号線には鉄のホームドアはありませんでした。

 モスクワ駅との連絡駅である1号線プローシャチ・ヴァススターニャ駅のホームはきれいな ドーム型をしており,柱のアーチの随所にきれいな彫刻が施されておりとても芸術的です。 無骨な車両や無愛想な駅員のオバサンと全く違い,このような建築美術にはかなり高い評価が 与えられるでしょう。そのほかにも長いエスカレーターの照明なども結構凝ったものが多く, 約3分近いエスカレーターでの暇な時間を潰すことができます。

 1号線にやってきた電車はかつての営団地下鉄銀座線2000系車両のような感じの,頭に3つ, 腰の左右に1つずつの5つものライトをつけたかなり古い車両でした。1号線は両開き4ドア車が 8両編成で運転され,全車両片運転台の車両で組成されているようです。ですが,必ずしも札幌 地下鉄の2020編成のように運転台同士が顔を合わせているわけではなく向きは全くバラバラでした。 車両の通り抜けはできません。軌間はおそらく標準軌,第三軌条による集電方式です。運転台脇に バックミラーが設置されていたので,ワンマン運転をしているのでしょう。

 車内はオールロングシートで座席は車端から「運転台−6−6−6−3」(−がドア位置)の 配置でした。つり革はなく水平のバーが設置され,それに掴まるようになっていますが,背の低い 人にはかなり厳しいかもしれません。照明は白熱灯で,駅到着前など電気的接点では室内の照明が 消えてしまいます。駅間が長いため結構な距離スピードを出していました。揺れもかなりのもの です。

 車両には3000形と6000形の2形式があるようで,3000形のほうが古いようです。室内の壁は ペンキ塗装そのもので,手塗りで何度も重ねられている感じで,ペンキのタレがつららのように 下がっているところもありました。当然ながら冷房はもちろん送風機などもなく,完全な自然送風で 走行中は天井のベンチレーターから勢いよく風が吹き込み,結構快適でした。一方の6000形車両は 外装こそ300形と同じですが,室内には化粧板が付けられており,3000形よりは若干新しく近代的な 車両のようです。それでも白熱灯,ベンチレーター,座席配置などは3000形と変わりありませんで した。

 3号線の車両も1号線と同じ塗装の車両のようで,レールの継ぎ目を渡る音から多分7両編成 だろうということは予想がつきました。ただ,いかんせん3号線の車両は全体がわからないので, なんとも正体不明です。また,2号線も1,3号線と同じ車両(多分)が走っていました。


参考資料:

  • 『地球の歩き方'04〜'05ロシア』ダイヤモンド社,2004.8。

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    2005/7/3作成
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