特別研究室

ワルシャワの地下鉄

きれいな状態の旧ソ連車両が残っています。



三つ目フル点灯!


・概要
 ポーランドの首都ワルシャワのメトロは2路線あり、1号線はワルシャワ市内を南北に、2号線は東西に走る路線になっています。現在のところ1号線のほうが営業距離は長く、駅数も多くなっていますが、2号線は将来的に延伸が計画されています。両路線とも第三軌条集電方式を採用し、軌間は標準軌1435mmを採用しています。

 ポーランドは旧ソ連の経済圏にあった東欧の国であったことから、ハンガリーとともに旧ソ連の技術供与を受けて地下鉄が建設され、使用される車両も旧ソ連の標準型車両(メトロマーシュ社製車両)が使われていました。現在はジーメンス社やアルストム社製など欧州主要メーカーの車両も用いられています。

 ワルシャワメトロを運営するZTMという組織は、メトロのほか、路線バスとトラムの運営もしており、共通の切符で乗車できます。運賃体系はゾーン制ですが、ワルシャワ空港を含むエリアはゾーン1にあるので、市内観光だけならゾーン1を出ることはないと思います。乗車券は20分券、75分券、90分券、24時間券のほか、金曜夜7時から月曜朝8時まで有効の週末券、週末に5人まで利用できる週末グループ券などもあります。先に説明した通り、空港もゾーン1に属するので、空港で24時間券を購入すれば、そのまま翌日の同じ時間まで市内観光に利用することができ、とても便利でお得です。


バス,トラム,地下鉄とも赤と黄色がイメージカラー。

・駅

 駅の入り口には黄色地に赤いMマークのサインが立っており、結構目立ちます。独立した駅舎を持つ駅も多く、駅舎の入り口を入ると券売機と回転バー式の改札機のあり、改札機に切符を通してバーを押して入場します。全般的に駅はきれいで、ホームに装飾が施されている駅も見られ、どの駅も異なる雰囲気の内装で、地下鉄全体で統一された感じはありません。郊外の終点駅では、トラムやバスのターミナルと一体化しており、乗り換えのしやすさは抜群です。


丸屋根に黄と赤のMマークが入口の目印。駅舎のある駅は構外に多い。


左:屋外の券売機はトラム利用者のためのもの。
右:トラムから地下鉄は屋根もありアクセス抜群。


M型屋根の赤・黄・青の3カラー。青は階段だけなので少し幅が狭い。


左:ガラス扉の改札機。真ん中のエレベーターはホーム行き。
中・右:こちらは回転バー式の改札機。どの駅もきれい。

 ホームの行き先案内は到着までの時間と行き先の他、来る車両のタイプが写真で表示されます。私のように特定の車両の写真を撮りたい人にとっては次にくる車両タイプがわかり、とてもありがたい表示でした。ホームは明るくてきれいで、装飾の有無にかかわらず快適に過ごすことができました。



緑・黄・青・赤・白のホーム装飾。壁面のデザイン文字は駅名。


左:階段の向こうの鏡はマジックミラーで事務室になっている。
右:どの駅にもエスカレーターなどもあり近代的な駅。

・車両
 ワルシャワメトロに使われている車両は3種類あり、1号線は3種類全部、2号線は一番新しい形式の1種類のみが使われています。どの種類の車両も白が基調色で、ドア回りと車体下部が赤というのは統一されていますが、細い帯の色は最新型の車両では黄色、それ以外は紺色になっています。全形式4つドアで5両編成で運用されています。


左:旧ソ連型標準車両未改修車。塗装以外は他の旧東欧諸国の車両と全く同じ。
右:旧ソ連型標準車両改修車。前面は大幅に更新しているが,側面は未更新車と変わらない。


左:二つ目の車両。前面の半分は貫通扉。
右:最新車両。逆三角のピラーが特徴的。

 まず一番古い車両は旧ソ連標準型車両で、1号線に使われています。社会主義の国際分業体制の下で作られた車両なので、ロシアのモスクワやハンガリー・ブダペストなどで使われる車両と全く同じ形をしています。ワルシャワの旧ソ連標準型車両はブダペストのそれと比べてメンテナンスがきちんとなされているらしく状態も良好で、外観を見てもそれほどくたびれた印象はありませんでした。車内も改修された様子が窺えました。このオリジナルの旧ソ連標準型車両は3か所にある6個のライトがとても印象的ですが、営業運転中に3つともライトを点けて走行している車両はあまり見かけません。運転士の裁量に任されているのでしょうが、他の車両や更新車も運用されており、旧ソ連オリジナル車両でかつ3か所点灯の車両は割合としてはあまり高くないので、撮影には何本か電車をやり過ごして何とか写すことができました。


左:やっぱり三つ目点灯はかっこいい!
右:未改修車でも内外装ともブダペストの車両より状態ははるかにいい。この車両は車番007。

 また、この車両は車体改修で顔が変わっているものもあり、白い枠が丸く縁どられた前面はオリジナルの直線基調の顔とはまったく違った印象を与えます。車内も蛍光灯やスタンチョンポールの配置が変更され、若干印象が異なります。車内は横掛けの座席が並び、欧州に見られるような固い座席ではなく、日本のようなモケットで覆われたクッション性の高い座席なのが特徴です。内装には壁の色などいくつかのパターンがあるようです。


左:旧ソ連型標準車両未改修車。木目調の内装。
中:こちらは同じ未改修車でも白い内装で,車内モニターも付いている。
右:旧ソ連型標準車両改修車。蛍光灯が2列になり未改修車よりも明るくなっている。蛍光灯があった中央部には送風機も新たに設置されている。

 2種類目の車両も1号線のみで使われており、前面窓と貫通扉が印象的な車両で、白を基調色に、窓回りが黒、腰から下に赤の腹巻と紺色の帯をまとった車両です。側面は赤く塗られた外吊りの扉が目立ちます。少し斜めに傾斜のついた前面ですが、角は丸みをおびており、旧ソ連標準型車両よりも柔らかい印象を与えます。座席は欧州によくみられる固い座席をワインレッドのモケットで覆っただけのクッション性のないものです。一部座席は跳ね上げ式になっており、自転車や車いすなどのスペースとして利用可能です。車内にはスタンチョンポールが配置され、つり革はありません。連結面はドアがあり、進入禁止などの表示も何もないので一見通り抜けできそうな感じですが、試していないので実際通り抜けできるかはわかりません。室内には案内用のモニターも設置されています。


左・中:2種類目の車両には帯の色が黄色と紺のものがある。
右:車内。座席はクッションのないベンチシート。

 3種類目の車両は最新型で、この車両は1号線と2号線の両方で使われています。前面が逆三角形のような形のピラーがあり、とても斬新なデザインです。この車両も基調色は白で、窓回りとドアが黒、胴から下は赤ですが、他の形式と異なり黄色い帯を巻いています。外に吊られたドアは下部まで大きな窓があり、他の形式とは異なる印象を与えています。座席は一部が簡易的な腰掛けや背もたれだけになっています。車内は通り抜けが可能で、黄色いスタンチョンポールと赤い座席で車内の雰囲気は他の形式とちょっと違った感じです。ドア付近の座席端上部にモニターがあり、広告や案内表示が映されています。面白いのは、車いす用のステップが装備されており、車いす利用者はドアにあるボタン操作で、係員の介助を必要とすることなく、自らステップを出して乗降することができます。


左:最新型車両の車内。とてもきれいで明るい。
中:ドアステップは必要があれば自分で稼働させる。
右:横から見るととても奇抜なデザイン。


参考資料:

  • 日本地下鉄協会『世界の地下鉄ビジュアルガイドブック』、ぎょうせい、2015.10。

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    2018/2/21作成
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