特別研究室

オーストリア・ウィーンの地下鉄の紹介

ヨーロッパの古都を走るきれいな地下鉄でした


白と緑で塗られたきれいな高架駅。


 ウィーンのあるオーストリアはドイツ語圏の国で,ウィーン地下鉄もドイツ同様Uバーンと呼ばれています。ウィーンのUバーンは5路線あり,U1〜U4とU6の名称が付けられていて,U5線は存在しません。Uバーンのネットワークは基本的に郊外を起点としてウィーンの中心部であるリングと呼ばれる地区をとおりまた郊外へ抜ける形になっており,U2だけが市内中心部にあるKarlsplatz駅を起点として北東方面の郊外へ向かっています。Uバーンだけで考えれば,同じ駅に乗り入れる路線は最大で3路線(Karlsplatz駅)だけで,例えば札幌地下鉄の大通駅のように全路線が乗り入れるような大きな乗換駅はありません。

 切符はSバーンやトラムと共通で,1回券の他に4回回数券,24・48・72時間のフリー乗車券と8日間のフリー乗車券などもあります。1回券は2.1ユーロ(2014年1月現在約300円)で,24時間のフリー乗車券は7.1ユーロ(約1000円)となっています。駅に改札機がない信用乗車方式で,使用開始時に切符に刻印をしてから乗車します。

 5路線のうちU1〜U4は高いホームのいわゆる本格的地下鉄で4路線で共通の車両2形式が使われています。U6線のみが規格が異なりホームの低いホームのトラム的な路線で,3両1編成のトラムのような車両が4編成連結して運用されています。トラムとの合いの子のような車両で架線集電方式を採用しています。

 U1〜U4線の車両は新旧2形式あり,どちらも発光部の大きな前面が特徴です。いずれの形式も2+2+2の6両編成で,片運転台同士の2両編成が1ユニットです。終電方式は第三軌条集電方式です。旧型のタイプの車内は4人のボックス掛けでユニットの中の車両間でも通り抜けはできず、車端部はバスの後部座席のような5人掛け座席になっています。新型タイプの車両もユニット内での通り抜けができず、車内はFRP製の固い座席がボックス型に配置されるタイプになっています。


左:U1〜U4線用の旧型車両。四角い顔と無地の外観。帯に見える部分は横長のライト。
右:車内はボックスシートが並ぶ。


左:車両間の通り抜けはできない。車端部はバスタイプの5人掛け。
右:2+2+2の6両編成の先頭車同士。当初札幌地下鉄が目指したのはこういう形だった。


左:U1〜U4線用の新型車両。こちらも前面に大きなライト。
右:車内はボックスシートで車両間の通り抜けができる。

 一方のU6線用車両はトラム車両のように1編成の片側にしか運転台のないタイプの車両で1編成3両,これが4編成連結された12両編成で運用されています。1両の長さが短いので,12両編成でもそれほど長いとは感じません。ホームは他の路線よりも低く,アムステルダムのメトロ50号線,51号線やブリュッセルのプレメトロに似た感じでしょうか。 12両編成の組成もいろいろで

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のように,中間編成の運転台向きにはいろいろなパターンが見られました。


左:U6線用のトラム型車両。3+3+3+3の12両編成。
右:ホームが低く完全にトラム。


左:左が後尾車,右が先頭車。乗務員室ドアと足掛けステップの有無が異なる。
右:車内はボックスシート。編成内だと車両間の通り抜けができるが1両は短い。

 まず,駅の入り口にはドイツのUバーンと同じ青地にUのマークがあります。駅内は券売機と刻印機があるだけで改札口はなく,シンプルな作りとなっています。ホームには行き先と到着までの時間が表示される表示器が設置されています。

 面白い駅としてはドナウ川の中州にあるU1線のDonauinsel駅。この駅の前後はドナウ川を渡る区間で道路橋の走行路下に地下鉄用のトンネル(ケーソン)あり,そこを地下鉄が走ります。東京のゆりかもめやJR.瀬戸大橋線のような鉄橋の構造体の中の明かり区間ではなく,橋上なのにトンネル内という珍しい構造です。その橋上トンネルの途中にあるのがDonauinsel駅。この駅はドナウ川の中洲にあり,駅周辺は公園になっています。駅ホームには地下鉄用トンネルの両脇にある橋の歩道から直接入ることができるほか,ホームの階段降りると橋の下に広がる公園内に出ます。


左:Donauinsel駅。ドナウ川の中洲にある駅。ウィーンメトロのマークはドイツと同じく青地に白いU字。
右:自動車路の下に設けられたコンクリート函(ケーソン)の中を通る

 また,同じくドナウ川を渡るU6線のNeue Donau駅もまさにドナウ川のほとりに駅があります。ここは明かり区間で,ホームからはドナウ川が見渡せます。そして,この付近はSバーンとの併走区間でもありますが,Uバーンの駅ができてSバーンの駅は廃止されたようで,Uバーン駅のすぐ隣に廃墟となった駅ホームの跡が残っています。


左:Neue Donau駅。ホームはドナウ川が見渡せるようガラス張り。
右:駅を出るとすぐにドナウ川が見える。右は近郊鉄道線、左の緑の手すりは歩行者橋。

 ウィーンメトロに特徴的な駅としては、U6線の地上駅であるNassadorfstrasse駅です。この駅のホームは白い壁に緑色の柱で装飾されており,とてもきれいな駅です。駅自体も大きな駅舎を持ち,外から見てもとてもきれいな駅です。この駅とその隣の駅も似たようなきれいな駅になっています。ウィーン地下鉄の最も特徴的な駅でしょう。


左:駅名標のフォントも凝っている。右:駅舎も立派な造り。

 U2線の東側の終点Seestadt駅は最近延伸された区間で郊外の何もない野原の真ん中を地下鉄が高架で走り抜けます。まるで地下鉄路線とは思えない区間です。終点の○○駅前も全く何もなく、私が訪ねた昼間の時間帯では電車が着くと数人の乗客がバスに乗り換えていく程度で,バスが発車してしまうと全くの無人状態になってしまいます。駅周辺では建物の工事が行われ,たくさんのクレーンが見られます。これから発展していくことでしょう。


左:U2線Seestadt駅前。全く何もなく建設用クレーンが乱立する。
右:車窓はこんな感じの見渡す限りの平原。


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2015/7/23修正
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