特別研究室

カナダ・モントリオール地下鉄の紹介

ゴムタイヤ地下鉄のライバル対決です。


モントリオール地下鉄もゴムタイヤ車両が使われています。
ただしフランス・パリなどと同じく鉄車輪併用式です。


 カナダのケベック州にあるモントリオール市の市内交通は地下鉄・バスの2系統でできて います。札幌でいう交通局にあたるSTM(Le Societe de transport de Montreal:「モントリ オール社会交通」とでも訳すのか?!)が運行しています。このうち地下鉄路線は4系統あり、 札幌と同じ緑、オレンジ、青、それに黄色のラインカラーで表示されています。走る車両は 見た目ほぼ同じスカイブルーに白いラインの入った車両が4両から10両編成で運行しています。 車両はフランスパリやリヨンなどの地下鉄と同じゴムタイヤと鉄車輪併用式です。モントリ オールがカナダでもフランス圏に入るから地下鉄もフランス式を採用したのでしょうか。 それぞれの駅はとても個性的なデザインで東豊線の豊平方面のように同じようなつくりの駅が 続くことはありません。

 料金はバス・地下鉄一乗車2ドル50セント(約200円)でこの料金でバス−地下鉄の乗り 継ぎもできます。また6枚綴りで11ドル(約900円)、ツーリストカードと呼ばれるフリー乗車券 は1日用が8ドル(約650円)、3日用が16ドル(約1300円)となっています。バス・地下鉄すべてを 含めて市内全域が均一区間で200円ほどですので、料金は札幌と比べて安いですね。営業時間は 5:30から1:00頃までで平日は3〜5分間隔、土日は5〜12分間隔で運行されています。

 利用方法は簡単。自動販売機でコインを入れてトークンというメダルを買い、改札機ゲート に入れてバーを押し通るだけ。ただし、紙幣を入れると自動的に何枚かのトークンが出てくるの で、一回しか乗車しないときに紙幣しかない場合は改札口横の有人改札を使います。バスへの 乗り換えをする場合には、乗車駅改札内のトランスファー・チケット発行機からトランスファー・ チケットを取ります。このチケットには乗車駅と乗車時間が印字されており、最初の乗車から90分 以内だと追加料金なしで乗り継ぎができます(ただし、逆戻りするルートの乗り継ぎは不可)。 バスから地下鉄へ乗り継ぎの時も乗車時料金を払ったときに運転手からトランスファー・チケット を受け取ります。たいていの場合、運転手がチケットを持って差し出しているので、何も言わなく ても必要があれば一枚もらえばいいだけです。(もちろん乗るときにHi!とかBonjour!とか挨拶する と返事が返ってきますよ。)

 モントリオールのSTMについては、詳しくはSTMホームページ を参照してください。


どの駅も個性的(左:Jean-Drapeau駅、中:Place Saint Henri駅、右:Acadie駅)

 車両は先に書いたとおり、ゴムタイヤと鉄車輪の併用式です。車体の外側に見えるシングルの ゴムタイヤの内側に鉄車輪が装着されています。そのため、軌道もゴムタイヤの走行部分(東西線、 東豊線とほぼ同じ)の内側に鉄レールが敷かれています。また、札幌地下鉄の案内軌条に当たる ものは、外側にガイドレールがあり、これも水平になった小さなタイヤをガイドレールに当てて 電車の進む方向をガイドします。ですが、ポイント部分にはガイドレールがないため、鉄車輪で 進む方向を決めているようです。やはり札幌のように100%ゴムタイヤで進路を決めるのは難しか ったのでしょうか。ガイドレールは集電用の第三軌条としても使われているようです。


左:軌道。タイヤ走行路の内側にレールがある。
中:ゴムタイヤ。この内側に鉄車輪がある。ガイド用の小さなタイヤも見える。
右:編成全体ではこんな感じ。

 車両はどの路線もスカイブルーに白いラインの車両、ちょっと小柄な大きさです。3+2+2+3の 10両編成が最大で、ほんとにホームぎりぎりまで使います。そのため、10両編成の場合は駅に 停まった状態で前面の写真を写すことは全くできません。動いている時であれば写せますが、 ストロボを使うわけにいかず、バルブ写真のように車両が伸びてしまいます。したがって、 車両前面の写真はありません。室内はセミクロスシートで車両間の通り抜けは非常時以外できません。 乗務員は運転手のみ。発車ベルなどはなく(外国では当然ですが)ドアはチャイムの後に閉まります。 乗客が挟まれそうになったときには、ドアが再び開くのではなく、ドアの動きが一時的に止まります。


左:電車進入。右:ホーム端に立っても横顔しか写せない。

 最近は東京の鉄車輪地下鉄しか乗ることがない私ですが、ゴムタイヤ鉄車輪併用式のモントリ オール地下鉄でも札幌地下鉄のようなゴムタイヤの独特の乗り心地はありました。左右の揺れが ふわっとした感じというか、ゴツゴツしていない感じというか、そういうものは札幌もモントリオ ールも同じでした。ただし、やはり鉄車輪を併用していることもあり、走行ノイズはそれほど小さく ありません。この点は札幌地下鉄に軍配が上がるでしょう。特にポイント通過時のガタンガタン という音はレール上を走る車両の宿命で、札幌地下鉄ではポイント通過がほとんどわからない くらい静かなのとは対照的です。

 ということで、少々地元ひいきですが、私は札幌地下鉄のほうが乗り心地・静粛性とも上だと 思いました。ただし、駅デザインは圧倒的にモントリオールの勝ち。どの駅にも同じデザインはなく、また 吹き抜けや採光窓、階段などがほんとに個性的で、どの駅にいても飽きません。札幌地下鉄の 駅デザインも東京の個性のない駅よりはずっとマシだとは思いますが(東西線のホーム壁の イラストなどはいいと思いますよ。ホント東京地下鉄は乗り降りするだけの場で、どの駅も 楽しみのかけらもありません)、モントリオール地下鉄はそのはるか上のレベルです。 結論として、私の独断に満ちた判定では、車両の乗り心地は札幌地下鉄の勝ち、駅デザインは モントリオールの勝ちとします。今度はフランス・パリやリヨンの地下鉄も乗ってみたいですね。


 カナダでもう一つ地下鉄の走る都市トロントですが,モントリオール地下鉄とは全く 性格が異なります。文化もモントリオールのフランス語文化圏に対し,トロントは英語文化圏。 地下鉄にもその違いは明確に現れていて,モントリオール地下鉄のお洒落な車両と駅に対して, トロント地下鉄はアメリカ的な武骨なデザインの車両です。

 運行はTTC(Toronto Transit Comission)という組織が行い,かつての札幌市交通局と同じく 地下鉄・バス・電車(トラム)の3種類を輸送手段を一括して管理しています。地下鉄の運行路線は 全部で4路線ありますが,本格的な地下鉄と言えるのはそのうち,札幌でいう南北線にあたる南北U字 型に伸びる路線(トロントは都心がオンタリオ湖岸近くにあるため,この路線は北部から市内の一番 南の都心を通ってまた北部に戻るルートになっている)と東西に横断する路線,U字路線に接続する 短い路線の3路線です。もう一つの路線は全線地上を走るので地下鉄とは言えないでしょう。トロント 地下鉄は2004年に開業50周年を迎えたそうです。

 料金は一乗車2ドル25セント(約185円)で,モントリオールより若干安め。バス・トラムとの 乗り継ぎに追加料金が不要などの料金システムはモントリオールと同じです。接続駅ではバス乗り場 も改札内にあります。北24条や宮の沢にあたる大きなバス・トラムのターミナルはすべて地下鉄と 無改札でつながっています。これらのターミナルではバスに乗るにも改札を通らなくてはなりません。

 地下鉄は平日ラッシュ時には札幌並みに混雑します。深夜は1:30頃まで運行され,その後も バスが終夜運行しています。ただ私が驚いたのは,休日の運行が朝9:00頃からということ。これは モントリオールでもありませんでした。時差ぼけで早朝に散歩した帰り地下鉄に乗ってホテルに 帰ろうとしましたが,当日は日曜日だったため,あえなく往復歩いて帰ることになってしまいました。


地下鉄・バス・トラムのトリオ。トロントも相互乗り換えに追加料金はいらない

 車両はステンレス製のアメリカでよく見かけるタイプのもの。デザインより機能優先の車両です。 6両〜8両での運行で,運転士・車掌の2名乗務方式。車掌は駅の治安維持のため中間先頭車に乗務 します(トロントは下手な日本の都市よりはるかに治安のよい都市ですが)。そのため,最後尾の 乗務員スペースは客席になっており,ここに座ると車掌気分が味わえます。ただし,座席は室内の 方を向いているため,後方の景色を見るには体をひねらなくてはなりません。当然窓やその他機器類 は固定され開閉および操作はできません。それでも後部から過ぎゆく景色を後部の窓一枚隔てて 見るのはまた結構楽しいです。


最後尾車両からの景色。窓一枚隔てて外。まさに車掌気分!


参考資料:

  • 『地球の歩き方'02〜'03カナダ』ダイヤモンド社,2002.6。
  • 谷川一巳『地下鉄のフシギ!?』,山海堂,1999.6。

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    2005/7/3修正
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