車両基地・検車線の研究

ここでは車両基地・検車線ついて研究します

私たち利用者にとってはあまり縁がありません。


西車両基地の地上部分
この高層マンションの地下に西車両基地と駐車場がある。


 札幌の地下鉄の車両基地は全部で3つあります。南北線の南車両基地,東西線の西車両基地と 東車両基地です。南北線用3000系と5000系は南車両基地に,東西線用6000系,8000系は東車両基地 に所属しています。東豊線には車両基地はありませんが,東豊線用7000系は東西線の西車両基地に 所属しています。したがって,7000系の運用は東西線と東豊線を結ぶ2〜3号連絡線を使用して行われ, 東豊線には車両基地がないかわりに栄町検車線があります。


南車両基地は南北線の車両基地で,南北線開業時の昭和46年12月から業務を開始しています。 位置は自衛隊前駅から分岐した自衛隊前−真駒内間にあります。地上1層式で本線から単線の 出入庫線を持ち,トランバーサ式転轍機7基,上下式転轍機1基により分岐する留置線,工場線を 含め合計23線を持つ基地となっています。

 ここには南北線用3000系と5000系全車両が所属しており,車両数は3000系8両×5編成=40両 と5000系6両×17編成=102両の合計142両となっています。以前は2000系全160両所属する基地で したが,2000系の全廃により今は3000系と5000系のみの所属となっています。車両数も最大176両が 所属していましたが,現在は5000系が6両編成である関係から以前より少なくなっています。

 以下の画像は,副所長が小学生の時に友人の親戚の交通局職員の方に 特別に南車両基地を案内してもらったときの写真です。当時は2000系全盛期で分解されて いる2000系の姿があります。

南車両基地留置線と事業用車両

工場部分で分解される2000系と制御室

札幌地下鉄ならではの表示


 西車両基地は東西線初期開業時の昭和51年から業務を開始した全地下方式の車両基地です。 西28丁目駅から複線の出入庫線により分岐し,全13線を持つ車両基地です。この車両基地の特徴 は,用地の多目的利用のため,地下1階部分に200台分の駐車場を持ち,地上部分が高層マンション となっている点です。また地下最深部分では東西線本線が線内最急勾配で下り,カーブを描きながら 車両基地の下をくぐる形になっています。

 西車両基地は東西線初期開業当初は6000系4両×20編成の合計80両が所属していました。 しかし,東西線新さっぽろ延長開業時には,車両数の増加に対応しきれなくなってしまいました。 そのため,延長開業部分の大谷地付近に新たな車両基地,東車両基地が設けられました。この時 西車両基地は6000系全24編成のうち,半数の12編成が所属していました。ただし,大規模な定期 検査などは東車両基地で実施するため,各種保守整備機器および試験器等は東車両基地に移設され, 工場部分は休止状態となり,単なる車庫として利用されていました。

 昭和63年の東豊線開業時には7000系の車両基地として利用されることとなったため,6000系は すべて東車両基地へ転属され,7000系4両×15編成=60両の所属する基地となりました。7000系も 定期分解検査は東車両基地まで回送し実施されますが,月検査以下の点検,故障修理は西車両基地で 行うこととなったため,各種機器類の再配置が行われました。これにより,西車両基地工場部分は 7年ぶりに息を吹き返し,台車と車体の分離,台車の分解,制御装置,ブレーキの単体検査などの 作業が可能となりました。また,以前は6両編成の6000系が4両編成の7000系になったため,自動試験 装置,乗降台,パンタグラフ点検台などの移設も行われています。


 東車両基地は東西線新さっぽろ延長時に新しく設置された車両基地で,その規模も札幌地下鉄車両 基地の中で最も大きくなっています。ひばりが丘駅新さっぽろ側から分岐し,単線の出入庫線1.3km2本で 結ばれています。単線2本にというのは,東車両基地は上下2層式の車両基地となっており,出入庫線も 上層(1階)接続と下層(地下1階)接続で2本に別れているためです。業務開始当初は6000系6両×12編成 (偶数編成)が所属していましたが,東豊線の開業により6000系全24編成が所属するようになりました。 さらに現在は6000系も7両化され,8000系7両×2編成を含む全182両が所属する大所帯となっています。

 東車両基地では6000系の定期分解検査の他,東豊線用7000系の定期分解検査も行われています。 東豊線開業時には6000系全24編成を収容するため,施設の増設が行われました。工場部分は長さを延長し, 作業スペースを拡大,天井走行クレーンの増設などが行われました。車庫部分では,ピット線2本, 洗車線2本,留置線6本の増設を行い,既存の設備とあわせて合計20線となりました。


 先にも述べましたが,東豊線には車両基地がなく,2〜3号連絡線で東西線西車両基地に回送 された上で点検・整備を行っています。しかし,万一の故障により西車両基地まで回送できなく なった場合を考え,東豊線栄町駅から約650m奥の本線上に栄町検車線が設けられています。 この栄町検車線の一部は,北車両基地が建設された場合,自動回送専用ホームとして計画 されていた部分です。

 栄町検車線には,留置線,ピット線,タイヤ交換線,工作車線が設けられ,ピット線,タイヤ 交換線にはそれぞれ8両編成が1本留置できるようになっています。また地上部分の建物はトラックが 直接建物内に入り,資材の積み降ろしができるように設計されており,地下へは大型エレベータが 利用して資材を搬入するようになっています。


 南郷通沿いに何の変哲もない建物があります。これが実は地下鉄3線を制御する総合指令所です。 指令所は指令所長,指令長の下部に下図のような組織を編成しており,統括指令,線別指令(両者を 併せて運転指令といいます)と設備指令の三指令部門に分けられます。全3線の運行と設備を一元的に 管理することによって,より一層の効率化が図られています。(注:この記述は若杉論文を参考に しており,1988年時点での内容です。)


参考資料:
札幌市交通局『札幌地下鉄建設物語』,1985.12。
札幌市交通局『札幌市高速鉄道 東豊線建設史(栄町〜豊水すすきの間)』,1989.9。
札幌市交通局『札幌市高速鉄道 東豊線工事記録(豊水すすきの〜福住間)』,1995.3。
『私鉄車両編成表』,ジェイ・アール・アール,各年版。
若杉守「札幌市営地下鉄の総合指令システム」『鉄道と電気』,Vol.42(5),鉄道電化協会,1988.5。


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2002/4/21修正
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