転轍機の研究

ここでは転轍機について研究します

案内軌条方式軌道の転轍機にはいくつか種類があります。


転轍機を渡る3000系(自衛隊前駅)


札幌地下鉄は案内軌条方式を採るため,他市の地下鉄には見られない転轍機の特徴があります。 第一に案内軌条が電車の進行方向を決めるため,転轍のためには案内軌条を転換する必要があるのです。 つまり,通常のレール式の鉄道であれば,本線側のレールと分岐側のレールをトングレールを可動させ 分岐させますが,案内軌条方式ではどちらかの進路が開通している時には非開通側の案内軌条が電車の 進行を妨げてしまうのです。札幌地下鉄にはこの非開通側案内軌条が電車の進路を妨害しないように, いくつかの転轍方式が考案されました。以下では,それぞれの転轍機の種類について 見てみます。


 上下式転轍機は案内軌条を上下させることで非開通側案内軌条を軌道上からなくするという転轍 機です。この転轍機のメリットは狭いトンネル内で左右幅を取ることなく設置できる点です。このため 本線上の転轍機は全て上下式転轍機となっています。この転轍機が一番よく見れるのは,南北線自衛隊前 駅真駒内側でしょう。ここはホームのすぐ隣に転轍機があるため,その作動状況がよくわかります。 私が小さい頃に初めて作動風景を目にしたときにはちょっと感動したのを覚えています。 このポイントが可動するのは,真駒内で営業運転を終えた電車が車庫に入るときと,自衛隊前発麻生行 が自衛隊前駅に入線するときのみです。上のイメージは平成11年11月までの土曜日ダイヤに設定 されてた自衛隊前発麻生行(運番24)がこのポイントを渡るときのものです。

 もう一つの特徴はポイント可動時に大きな音がすることです。通常のレール式鉄道の転轍機は 可動時には全くといっていいほど音がしません。しかし,札幌地下鉄の転轍機は「ガーン,ガーン」 といった感じのトンネル内に響く大きな音がするので,ポイントが切り換わったのがすぐにわかり ます。はじめの「ガーン」という音が,今まで開通していた側の案内軌条が下がる音,二回目の 「ガーン」が新規開通側の案内軌条が上がるときの音です。この音は各線の終端駅で耳を澄ませば 聞くことができるでしょう。特に福住駅はホームのすぐ近くに転轍機があるため,モーターの作動音 までかなりはっきりと聞くことができます。

 上下式転轍機には分岐形態により単動形,二動形,Y形,シーザス形の四種類があります。 単動形は単純分岐,二動形は片渡り線,Y形は南郷7丁目,元町,福住の各駅にあるタイプで 単動形を三組(二基の片開きと一基の両開き)合わせたタイプです。シーザス形は両渡り線用で, 片開き単動形四組と回転軌条を持つ最も複雑な上下式転轍機です。


 トランバーサ式転轍機は,分岐方向の走行路と案内軌条が付けられたテーブルを左右に スライドさせて進路を構成する転轍機です。この転轍機の特徴は,多方向でも容易に分岐できる という点で,車両基地内に設置されています。逆に左右の幅を大きく取るので,トンネルや シェルターに覆われた本線上には向いていません。


 湾曲式転轍機は,転轍機の案内軌条を弾性的に変形させて,進路を構成するタイプの転轍機 です。簡単に言うと,ちょうど電車連結部の幌のように,二つに分断してある直線の走行路と 一体となった案内軌条を弾性のある案内軌条でつなぎ,た案内軌条を回転させて曲線を描くという 仕組みです。この転轍機が使われている場所は,2〜3号連絡線(東西線と東豊 線の連絡線)の東西線側分岐部分(西11丁目−大通間)です。このポイントは,大通駅からも 見えないので,残念ながら作動している様子を見ることは通常不可能だと思います。この転轍機は 東西線が営業開始後で東豊線開業時に設けられたもので,転轍機敷設には東西線のこの区間の運行を 終日全面運休して工事が行われました。この件の詳しい内容は 歴史研究室・東豊線の歴史をご覧下さい。


参考資料:
札幌市交通局『札幌市高速鉄道 東豊線建設史(栄町〜豊水すすきの間)』,1989.9。
札幌市交通局『さっぽろの地下鉄・バス・電車』,1999.4。


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1999/10/11作成
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