今後のパリメトロ近代化計画

2006年2月に発表されたプレスリリースの概要をまとめました。


MF77の車両改修も進められる予定。
(13号線Chatillon-Montrouge駅)


 2006年2月にRATPから今後20年間のパリメトロの近代化計画についてプレスリリースが 発表されました。今後のパリメトロがどのようになるかかなり興味深い内容でしたので, ここではその内容を簡単にご紹介いたします。なお,フランス語のプレスリリースを Google Translateで 英訳してから解読していますので,一部に解釈の間違いなどがあるかもしれません。 その点はご了承願います。

 また,フランス語のプレスリリース本体は,RATPウェブサイトの 上部青い横ライン上にある"Presse"をクリックし,その左側写真付き項目(MF67の写真)"Dossiers"の 2006年2月22日(26/2/2006)の"La modernisation du metro parisien Le metro aura toujours 20 ans"です。


輸送容量の増加
 車両の近代化と安全設備の充実により,現状の30%ほど輸送容量の増加を行う。

快適性と情報提供
 車両の近代化により快適性の向上と音声・視覚による情報提供を実施。

安全設備の充実
 「Ouragam計画」と称する計画により,1号線の無人運転,13号線の2駅(St-LazareとInvalides) で試験されているホームドアの本格導入を行い,安全設備を充実させる。

定時性の向上,運転間隔の短縮
 Ouragamシステムという新運行管理システムを導入し,特にラッシュ時の定時性向上と運転 間隔の短縮を行う。

環境への配慮
 省エネ,環境への配慮のため,MP89,MF2000で導入された回生ブレーキ付き車両の導入を さらに進める。

 ネットワークの近代化のため,車両の置き換えと車両改修を行う。MF2000は旧形式より車両 コストが30%低下し,保守費用とエネルギー消費も30%程度減少させることができる。MF2000は車 内監視カメラ,強制換気システム(注),音声・視覚による情報提供装置を備えている。
(研究所長注)
パリメトロの旧型車両では冷房はもちろんのこと,送風装置も設置されておらず,換気はベンチ レータからの走行風自然換気のみで行われています。はっきりしたことはわかりませんが,MP89 などの比較的新しい車両では送風機などによる強制換気システムが導入されているらしいものの, こちらも冷房はありません(そもそも冷房はほとんど必要ありません)。

3号線用MF67およびMF77の車両改修
 2003年から始まった3号線用のMF67の車両改修作業は,2003年45編成,2004年19編成,2005年 16編成の更新を終え,2006年度に9編成の更新を予定している。改修ではロングシートの導入, 自動放送装置,路線案内表示機,強制換気システムの設置が行われている。一方,MF77の車両改修は 主に内装工事である。こちらも路線案内表示機や強制換気システムの設置と照明やシート地の更新 が行われ,自動放送による到着駅案内も行われる。また,ドア開けは従来のボタン式から完全自動 式に改められる。更新第一編成は2006年中に営業運転に入る見込み。なお,13号線では Ouragamシステムの導入試験のため,MF77の1編成が同システム対応に改修され,2006年2月から 営業時間帯での試運転を行っている。

2,5,9号線用MF2000
 2,5,9号線用のMF67はMF2000で置き換える。MF2000は805両(161編成)導入の見込みで,量産先行 車が2006年1月に到着し,試運転に入った。量産車は2007年第3四半期から2015年の間,年間平均20編成の ペースで導入される見込み。

時期内容
2006年1月量産先行車が到着
2006年2月5号線で夜間非営業時間帯の試運転
2006年3月半ば2号線で営業時間帯の試運転
2007年量産車第一編成が到着

1号線用MF05
 1号線では2010年までにMP05を49編成導入する(さらに10編成追加される可能性もある)予定で, 第一編成は2008年6月半ばに到着する見込み。MP05は無人運転に対応し,これにより1号線の 無人運転が行われる。

路線現行使用形式今後の使用形式
1号線MP89MP05
2号線MF67MF2000
3号線MF67MF67更新車
4号線MP59MP89
5号線MF67MF2000
6号線MP73次世代車両
7号線MF77MF77更新車
8号線MF77MF77更新車
9号線MF67MF2000
10号線MF67MF67
11号線MP59次世代車両
12号線MF67MF67
13号線MF77MF77更新車
14号線MP89MP89

「Ouragam計画」
 Ouragamシステムという新運行管理システムは,乗務員添乗運行列車の列車速度を常時監視する。 これにより運行間隔を最小1分30秒まで短縮することができる。Ouragamシステムには2仕様用意さ れる。標準仕様はまず利用客増加の著しい13号線に導入,続いてMF2000を投入する2,5,9号線に 導入される見込みで,車内信号の導入により灯色式信号の廃止が行われる。一方,もう一つの仕様 はMF67を継続使用する3,10,12号線に導入される見込みの簡素化仕様で,現在の灯色式信号を継続使用 する。

 13号線は1998年以来利用客の増加が続いており,現在ラッシュ時には19700人/時の輸送能力 を提供しているものの,混雑率がLa Fourche-Place de Clichy間で104%,Asnieres-Gennevilliers 支線で116%となっている。Ouragamシステムにより,ラッシュ時の最小運転間隔が1分45秒から1分 30秒に短縮され輸送能力は23000人/時に向上し,La Fourche-Place de Clichy間,Asnieres-Gennevilliers 支線でそれぞれ現行より22%,47%増加する(Asnieres-Gennevilliers支線とSt-Denis支線の列車配分 は2:3から1:1に変更)。

 また,2010年末までに1号線は完全自動運転化を行い,MP05を投入する。1号線はRERやSNCFの主要 駅と接続している関係から年間1億6000万人が利用する最も混雑する路線で,利用者も増加の傾向 にある。これにより,信頼性の向上のほか,不測の乗客増にも即座に対応できるといった柔軟性が もたらされ,サービス向上が図られる。

時期内容
2006年末ホーム改良工事開始
2008年初頭ホームドア設置完了
2009年秋MP05第一編成到着
2010年末完全自動運転化完了

 さらに,各駅にホームドアを設け,乗客の安全を確保するとともに,定時性を向上させる。 およそ1路線10駅程度にホームドアの設置することにより,列車遅延の60%が解消されると見積も っている。現在,13号線の2駅(St-LazareとInvalides)において,高さ1.5mのホームドアを 設け,試験的使用が行われている。試験ではメーカー3社のホームドアが設置され,2006年8月 まで6ヶ月間にわたり性能比較のほか,乗客の反応を収集している。本格的なホームドアの設置 はまず13号線から行われる予定である。


  1. はじめに(当研究所ご利用にあたって)
  2. 研究所長のひとりごと
  3. パリメトロの概要
  4. 車両の解説(総説)
  5. 車両の解説(形式別)
  6. 駅の紹介(入口)
  7. 駅の紹介(ホーム装飾その1)
  8. 駅の紹介(ホーム装飾その2)
  9. 駅の紹介(ホーム装飾その3)
  10. 駅の紹介(営業・折り返し方式)
  11. 駅の紹介(構造その1)
  12. 駅の紹介(構造その2)
  13. 今後のパリメトロ近代化計画
  14. 世界各国の地下鉄の紹介
  15. 参考資料・リンク
  16. 札幌地下鉄研究所

参考資料:
RATPウェブサイトhttp://www.ratp.fr(フランス語)。


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2011/5/8修正
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