雪の降る1号線Bastille駅
時間・曜日限定駅
13号線のLiege駅は月曜日から土曜日の5:30〜20:00までの営業で,20:00以降の夜間や日曜・
祝日は駅が閉鎖され,その間は両隣の駅を利用することになります。駅が閉鎖されている
時間は電車も通過となります。私も一度日曜日にこの駅で降りる予定だったのが,乗った後に
電車の中の路線案内で駅が休みだと知り,次の駅で降りてバスで戻ったことがあります。時間・
曜日限定駅は今はこの駅だけです。また,12号線のRennes駅もかつて曜日・時間限定
駅でしたが,2004年9月から通常の営業になりました。両隣の駅にはRennes駅が開いているか
閉まっているかを乗務員に知らせる表示機がまだ残されています。
<2008年1月追記>
2007年12月の訪問の際には,Liege駅は通年終日営業になっており,パリメトロで時間・曜日
限定駅はなくなりました。
左:13号線Liege駅。白い看板に営業時間の注意が書いてある。
右:12号線Rennes駅。白い看板には「2004年9月6日から年中無休
で5:30〜1:05まで営業します。」と書いている。
駅の改装工事
これまできれいな駅をたくさんご紹介しましたが,毎日のようにどこかの駅で改装工事が行われ
ています。改装工事には駅の営業を続けながらタイルなどを剥がして改装工事をする場合と,完全
に駅を閉鎖して大規模に改修工事をする場合の2通りがあります。この他,特定区間の運転を一定期
間中止して行う大規模な工事もあり,これは乗客の少ない夏のバカンスシーズンに行われることが
多いようです(乗務員のバカンスへの配慮もあるようです)。パリに着いてから降りようと思った
駅が閉鎖されていると戸惑うでしょうから,パリに行くときには滞在先や訪問先の最寄り駅が
改装工事で閉鎖されていないか確認することをお勧めします。
ホテルのウェブサイトや旅行会社でも最寄り駅の改装工事までフォローしているところは 少ないでしょうが,RATPホームページ から確認することができます。RATPトップページの左側「Espace voyageurs」から 「Plan Interactif」というところをクリックすれば路線図にリンクします。路線図の中で オレンジ色のパイロンマークがある駅が工事予定のある駅です。工事期間などはマウスを パイロンマークの上に当てると表示されます。"fermee"という単語が入っていれば駅閉鎖, "interrompu"というのは特定区間の運転が中止されることを意味します。なお,駅閉鎖を 伴わない改修工事の情報は掲載されません。
左:改装工事中,完全閉鎖の駅。工事のしるしは青と緑の柵。(10号線Segur駅)
右:こちらは営業しながら改装中。タイルが全部剥がされている。(10号線Chardon Lagache駅)
左:改装工事のための閉鎖直前の駅。青空と雲のポスターは改修工事のお知らせ。(8号線La Tour Maubourg駅)
右:改修工事が終わった駅にはタイルに記録が残される。(2号線Victor Hugo駅)
パリ市内20区の境界にあたるところにはかつて城壁があり,その城壁の門の名前が地名に なっています。パリメトロの駅にもPorteがつく駅がたくさんありますが,このPorteというのが 日本語で言う「門」や「入口」という意味です。日本でいう「桜田門」,「半蔵門」にあたるのが 「Porte ○○」という地名なのです。かつて,パリメトロはパリ20区内を中心に整備が進めら れたため,境界である「Porte ○○」が終点駅になることが多くありました。そのため,現在は 郊外に延伸された路線でもPorte駅にはループ線や留置線などが残されているところが多くあります。 以下の表にはパリメトロのPorte駅をまとめ,何か特別な設備があるかを示しました。なお, パリ市の境界まで達しない6号線と14号線,それに7bis線にはPorte駅はありません。 また,13号線にはSt-Denis-Porte de Parisという駅がありますが,パリ20区内の駅ではないので 除外しました。
路線 | 駅名 | 特別な設備 |
---|---|---|
1 | Porte Maillot | 留置線・旧ループ線 |
Porte de Vincennes | 2号線および車両基地への連絡線 | |
2 | Porte Dauphine | 留置線・ループ線 |
3 | Porte de Champerret | 留置線・ループ線 |
Porte de Bagnolet | 特になし | |
3bis | Porte des Lilas | 留置線・ループ線 |
4 | Porte de Clignancourt | 留置線・ループ線・車両基地への連絡線 |
Porte d'Olreans | 留置線 | |
5 | Porte de Pantin | 留置線 |
7 | Porte de la Villette | 留置線・ループ線・車両基地への連絡線 |
Porte d'Italie | 特になし | |
Porte de Choisy | 特になし | |
Porte d'Ivry | 留置線・車両基地への連絡線 | |
8 | Porte Doree | 特になし |
Porte de Charenton | 留置線 | |
9 | Porte de St-Cloud | 留置線・10号線および車両基地への連絡線 |
Porte de Montreuil | 留置線 | |
10 | Porte d'Auteuil | 留置線・9号線および車両基地への連絡線 |
11 | Porte des Lilas | 留置線 |
12 | Porte de Versailles | 留置線・車両基地への連絡線 |
Porte de la Chapelle | 留置線 | |
13 | Porte de Clichy | 留置線・ループ線 |
Porte de St-Ouen | 留置線 | |
Porte de Vanves | 留置線 |
左:8号線Porte de Charenton駅。2面4線構造を持つ。
右:12号線Porte de Versailles駅の駅名標。PorteはPteと略される。
ループ線折り返し
パリメトロではいくつかの終点駅でループ線を使った折り返しが行われています。これは
終点駅にループ線を設け,エンドを変えずに折り返すことです。パリメトロの車両の一部は
車両間の通り抜けができないため,エンドを交換するとその度に乗務員が車外へ出なければ
なりません。また,ループ線折り返しにより,折り返し時間の短縮も可能でラッシュ時など
でも所要編成数を少なくして高頻度運転を行うことができます。そのため,パリメトロでは
かつてループ線折り返しが積極的に採用されていました。特にパリは主要なところに広場が
あり,ループ線を配置する空間的な制約も少なかったこともあるでしょう。ループ折り返し
のメリットを具体例でご紹介すると,例えば両端の終点駅でループ折り返しが行われている
4号線は,ピーク時の運転間隔が1分45秒です。エンド交換折り返しで同様の運転間隔を確保
しようとすれば,折り返し時間が最低でも3分は必要でしょうから,それぞれの終点駅で
1編成ずつ,合計2編成所要編成数が増えることになります。
【2013年10月追記】4号線は延伸に伴い,Porte d'Orleans駅のループ線が撤去されました。
ループ線を持つ駅には,降車ホームと乗車ホームが別になって電車が回送でループを通過する 回送タイプと乗客が乗車したままループ線を通過し,降車ホームと乗車ホームが同一の営業タイプ の二通りがあります(下図参照)。現在,ループ線折り返しが行われているのは以下の表にある駅で, それぞれどちらのタイプかを示しています。回送ループの典型的な駅は2号線Porte Dauphine駅で しょう。ループの輪がとても小さく(半径30m),ループの様子がよくわかります。降車ホーム の先はもの凄い急カーブが続いており,乗車ホームからはホームに入線している電車のすぐ後ろ まで次の電車が迫ってきますから,ループ線見物には良い駅だと思います。アールヌーボーの 入口を見物したついでにループ線も見物してみてはいかがでしょうか。
一方,ループ線の乗車体験は営業ループならどこでも可能です。 6号線のCharles de Gaulle-Etoile駅はループ線の一部が留置線として使われ,急カーブのトン ネルに留置される車両が窓から見えます。余談ですが,この駅は進行方向左側が降車ホーム, 右側が乗車ホームとなっており,乗降ホームが分かれています。でも,6号線から1号線 Chateau de Vincennes方面に乗り換えるには,乗ってくる人をかき分けて乗車ホームへ降りると とても近くて便利です。
ループ線の基本形。
左:回送ループ:乗車ホームと降車ホームが分かれておりその間を回送で通過する。
右:営業ループ:乗車ホームと降車ホームが同一。乗客を乗せたままループ線を通過。
路線 | 駅名 | タイプ |
---|---|---|
2 | Porte Dauphine | 回送ループ |
Nation | 営業ループ | |
3bis | Porte des Lilas | 回送ループ |
4 | Porte de Clignancourt | 回送ループ |
6 | Charles de Gaulle-Etoile | 営業ループ |
Nation(注1) | 営業ループ |
2号線Porte Dauphine駅のループ線。
左:降車ホームから。急カーブなのは電車の連結面のずれでわかる。
右:ループ内で一旦停止し,先行列車の発車を待つ。
左:こちらは乗車ホームから。カーブのきつさは想像以上。写真にはないが,ホームから後続列車の先頭が見えるときもある。
右:6号線Charls de Gaulle Etoile駅。1線のループ線の両側にホームがある。手前が乗車ホーム,反対側が降車ホーム。
ところが,このループ線折り返し方式もデメリットがあります。それは終端駅から さらに先に路線が延長されると,ループ線自体が全く無用の長物になってしまうことです。 また,線形の制約から延長開業部分の建設工事も難しくコストがかかるようになってしまいます。 このようなことから,1970年代以降延長された区間の終点はどの駅もエンド交換による 折り返し方式をとっています。そして,路線延伸によって使われなくなったループ線は車両の 留置に使われることが多くなっています。使われなくなったループ線は以下の表にあるとおりです。
路線 | 駅名 | 現在の用途 |
---|---|---|
1 | Porte Maillot(注1) | 留置線 |
Porte de Vincennes | 取り壊し | |
3 | Porte de Champerret | 留置線 |
Villiers | 取り壊し | |
Gambetta(注1) | 3bis線ホーム・3bis線との連絡線・留置線 | |
4 | Porte d'Orleans(注1) | 留置線 |
5 | Place d'Italie(注1) | 引き込み線・6号線および車両基地への連絡線 |
Gare du Nord(注1) | 乗務員研修施設 | |
7 | Porte de la Villette | 車両基地への連絡線・留置線 |
13 | Porte de Clichy | 留置線 |
Invalides(注2) | 8号線との連絡線・留置線 |
ホーム折り返し
エンド交換で折り返しをする駅では,基本的に終点駅で乗客を降ろした後,一旦引き込み線に
引き上げてエンド交換をします。ただ,ダイヤの乱れなどで折り返し時間を短縮させるときには
ホーム折り返しも見られます。日常的にホーム折り返しを行う駅はパリメトロでもそれほど多く
ありません。したがって,引き込み線のない端頭式ホームもそれほど多くないのですが,10号線
のBoulogne Pont de St-Cloud駅は引き込み線がない形状で,ホームの端で線路が終わっています。
そのため,当然ながら電車は全てホームで折り返します。また,3bis線のGambetta駅も線路は
ホームで行き止まりになっており,電車はホームで折り返します。3bis線のGambetta駅はかつて
の3号線ループの一部を3号線本線から切り離して行き止まりとしホームとしています。あと,
7bis線のLuis Blanc駅でもホーム折り返しが行われています。Luis Blanc駅の詳細は
「パリメ
トロの駅(構造その2)」の「乗り換えの楽な駅」をご覧ください。
左:10号線Boulogne Pont de St-Cloud駅。写真手前に車止めがある。
オレンジの基調色と少ない照明のため,構内はかなり暗い。
右:3bis線Gambetta駅。かつては写真手前のほうまで線路が延びてループ線となっていた。
参考資料:
松村美與子『パリメトロ物語』2000。
Brian Hardy『Paris Metro Handbook』1999(英語)。
Jean Tricoire『Un Siecle de Metro en 14 Lignes』2004(フランス語)。
Jean-Paul Ladril『Carnet de Paris en Metro』2005(フランス語)。
『METRO2003』http://www.metro2003.com/。
『ラ・プティト・サンチュール 〜 忘れられた鉄道』http://www.geocities.jp/lapetiteceinture/。
RATPウェブサイトhttp://www.ratp.fr(フランス語)。