パリメトロの駅(入口)

まずは入口からご紹介

庇つきのアールヌーボ入口は３駅に残るのみ。
（1･4･7･11･14号線Chatelet駅）

パリメトロのサイン

　パリに来てメトロに乗ろうとするとき，最初に見るのは当然ながらメトロの入口ですよね。パリメトロはパリ市内での駅間が非常に短く（平均約500m），街の至るところにメトロの駅があります。したがって，メトロの入口もあちこちで見かけることができます。メトロの入口には「Metropolitain」や「Metro」，「M」などのマークが掲げられ，遠くからでもよくわかります。また，一部のメトロ入口はアールヌーボーと呼ばれる建築様式で作られています。これは建築家エクトル・ギマールが作ったもので，美術的にも非常に有名です。パリの街並みに溶け込んだアールヌーボーのメトロ入口はとても美しく，パリの名物にもなっています。もちろん，アールヌーボー入口だけではなく，普通の入口もデザイン的にとても凝っていて，これだけを見ても飽きることはありません。

　以降はあまり説明もありませんので，写真を見てお楽しみください。

左：メトロサイン。円に黄色の「M」が一番多い。(8号線Porte de Charenton駅)
中：こちら珍しい角形。建物一体型入口に多い。(9･13号線Miromesnil駅)
右：昔のラジオのアンテナみたい。(4号線Porte d'Orleans駅)

左：比較的最近開業した駅はこのサイン。(14号線Cour St-Emilion駅)
中：このサインは3号線Sentier駅にしかない。(3号線Sentier駅）
右：最も新しい緑地の新型サイン（9号線Buzenval駅）

左：青丸タイプ(5号線Quai de la Rapee駅)
右：駅舎のガラス部分に白丸タイプ。あまり目立たない。（13号線Les Courtilles駅）

左：サインなしタイプ（3号線Pont de Levallois駅）
右：最新電光タイプ。表裏で二股に分かれ，若干曲面している。（4号線Mairie de Montrouge駅）

・赤サイン

左：赤地にMETRO文字。これもよく見かける。(10号線Porte d'Auteuil駅)
右：左のものとデザインが違う。(9号線Exelmans駅）

左：壁掛けタイプ１：柵に取り付け(1･11号線Hotel de Ville駅)
右：壁掛けタイプ２：塀に取り付け(1･8･12号線Concorde駅）

左：変形タイプ１：壁掛け形。この駅だけのもの。(10号線Vaneau駅)
中：変形タイプ２：矢印つき。(12号線Lamarck Caulaincourt駅)
右：変形タイプ３：ちょっとおでぶタイプ。(1･9号線Franklin D. Roosevelt駅)

左：変形タイプ４：つり下げタイプ。(12号線Rennes駅)
右：変形タイプ５：アーチタイプ。(12号線St-Georges駅)

左：変形タイプ６：Ｌ字タイプ。(9号線Robespierre駅)
右：変形タイプ７：壁取り付けタイプ。(9号線Robespierre駅)

・その他のサイン

左：角柱タイプ。(9号線Mairie de Montreuil駅)
右：彫り込みタイプ。(1号線George V駅)

左：入口支柱一体タイプ。(7bis･11号線Place des Fetes駅)
右：RER居候タイプ。「RER B,C」表示の横に「M10」とある。(10号線Culmy La Sorbonne駅)

左：茶色タイプ。(3号線Bourse駅)
右：換気口一体タイプ（3bis･11号線Porte des Lilas駅）

入口のデザイン

・アールヌーボー様式（庇なし）

左：アールヌーボー入口。植物がモチーフ。(4号線Cite駅)
中・右：赤いランプは花のつぼみのよう。(2号線Victor Hugo駅，10号線Mirabeau駅)

左：変形タイプ１：赤サインとの融合タイプ。(1･14号線Gare de Lyon駅)
右：変形タイプ２：壁掛けサインタイプ。(1号線Tuileries駅)

左：変形タイプ３：アーチなしタイプ。(5･6･7号線Place d'Italie駅)
右：変形タイプ４：幅狭タイプ。表示がMETROと省略される。(3･4号線Reaumur Sebastpol駅)

・アールヌーボー様式（庇つき）

　屋根つきのアールヌーボ様式入口は，かつてはあちこちの駅にあったそうですが，改修により取り壊され，現在はパリメトロ入口でも3か所しかありません。美しいデザインは一見の価値があります。パリでは芸術は特別なものではなく，日常の生活の中にあるものといわれますが，まさにそれがこの入口にも表れているのではないでしょうか。パリを訪れた際には，是非一度足を運んで見物してみてください。

　3つある庇つき入口を順番にご紹介しましょう。まず一つ目はパリの中心部にあるChatelet駅のものです。パリの中心部にあることや5路線が乗り入れる駅ですので，アールヌーボ入口の中でも一番行きやすいところでしょう。多くの路線が乗り入れる複雑な構造の駅で，入口もたくさんありますが，アールヌーボー様式の入口はPlace Sainte Opportuneにあり，4号線の上にあたります。周辺は繁華街でたくさんの人が利用しています。そのため，あまりゆっくり見物するという雰囲気ではないかもしれません。

左：パリの中心部にも庇つき入口が残る。(1･4･7･11･14号線Chatelet駅)
右：まるで昆虫が羽根を広げているよう。

　次にご紹介するのは，12号線のAbbesses駅のものです。この駅はモンマルトルという観光地の最寄り駅ですので，観光のついでに見物することができます。観光地ということもあり，比較的にぎやかなところです。他の2駅のデザインと大きく異なるので，見る価値はあると思います。

左：他の２駅のものとデザインが大きく異なる。(12号線Abbesses駅)
右：後ろ側から。後ろ側は直線基調。

　最後は2号線Porte Dauphine駅のものです。市内中心部からはちょっと離れてしまいますが，壁があるなど3駅の入口の中でも最も凝ったデザインですので，これも是非見物したら良いと思います。この入口はこの駅で接続するRER駅やバス乗り場と反対の広場の中にあり，緑の中にひっそりと佇んでいます。この入口の利用者はあまり多くないので，写真もゆっくり撮れるでしょう。

左：Chatelet駅のものと似たデザインだが，こちらは壁つき。(2号線Porte Dauphine駅)
中：後ろ側から。こちらは後ろ側も曲線基調。
右：背面中央の柱は雨水を流す管になっている。

左：正面から。メトロに乗るときはこんな感じに見える。
中：壁面パネルのデザインも凝っている。
右：「MERTOPOLITAIN」の文字の横にギマールの名前が。

・その他ちょっと面白い入口

　まずは建物一体型の入口。札幌地下鉄には建物と一体となった入口はあちこちに見られますが，パリメトロでは少数派です。そのうちの1つは9･13号線Miromesnil駅。先にご紹介した角形「Ｍ」サインが2つ設置されており，入口の上には青サインで「METRO」と書かれています。 9号線のBuzenval駅は13号線Miromesnil駅と似た感じで交差点角の建物の1階が入口になっています。同じく9号線の終点駅Merie de Montreuil駅も建物入口があります。もう一つは13号線のPernety駅も建物一体型入口です。この駅の入口には三角形の屋根が大きく張り出し，「METROPOLITAIN」と書かれています。周辺は特に大きな店もなく静かなところです。あと，10号線のVaneau駅は建物とは一体ではありませんが，敷地を囲む塀と一体型の入口です。ここも先に紹介した壁掛け型赤サインが掲げられています。また，入口の横には古代エジプト人の像が飾られています。

左：建物一体型入口はパリメトロには珍しい。(9･13号線Miromesnil駅)
中：こちらも建物一体型。新しいサインが取り付けられている。（9号線のBuzenval駅）
右：アパルトマンの１階部分にある入口（9号線Merie de Montreuil駅）

左：三角の大きな屋根が目印。建物の赤い壁ともマッチする。(13号線Pernety駅)
右：塀と一体型。駐車禁止の標識の奥に像がある。(10号線Vaneau駅)

　7号線南側の２つの終端駅も建物と一体となった入口があります。7号線の終端駅Mairie d'Ivry駅は商店やアパルトマンなどが入る大きな建物の1階に入口があります。またもう一方の終端駅（7号線の南側は途中で分岐し2つの終端的があります）のVillejuif Louis Aragon駅も大きな建物の1階部分に入口が設けられています。

左：Mマークの裏側に入口がある。(7号線Mairie d'Ivry駅)
右：建物の壁に大きな⑦マーク。(7号線Villejuif Louis Aragon駅)

　次に独立した建物入口。3bis線にある４駅のうちGambetta駅を除くPorte des Lilas， St- Frageau，Pelleportの３駅には地上から改札階までのエレベーターが付いており，これらの駅ではエレベーターを収めた独立した建物入口があります。St- Frageau駅とPelleport駅の入口の外観は似ており，白い建物に庇が付き，帽子をかぶったよう感じをして換気口の部分には”METROPOLITAIN”と青い文字で取り付けられ，庇には駅名がタイルモザイク入れられています。入口からはエレベーターシャフトを囲むように階段が設置されており，切符売り場や改札口のあるコンコースにつながっています。エレベーターは日本のようにボタンでドアを開閉するものではなく，一定時間が経てば自動的に出発する仕組みになっています。

左：帽子をかぶったような形の入口（3bis線Pelleport駅）
右：こちらはちょっと大きめ（3bis･11号線Porte des Lilas駅）

　7bis･11号線にあるPlace des Fetes駅はパリメトロでは珍しく長いエスカレーターが設置されている駅です。エスカレーターの地上側は広場の真ん中になり，立派な建物の入口があります。一方，6号線のSt-Jacques駅は線路が地下から地上に上がる途中にある駅で，メトロの駅としては珍しく駅舎があります。小さな駅舎はタイルが貼られとても可愛らしく，屋根に誇らしげに「METROPOLITAIN」と掲げられています。駅舎に３つあるドアのうち１つに「ENTREE(入口)」，２つに「SORTIE（出口）」と書かれて区別されています。駅舎の中にはキップ売り場と改札機があるくらいで設備的には他の駅と変わりません。

左：広場に独立した屋根付き入口がある。(7bis･11号線Place des Fetes駅)
右：小さくてかわいい駅舎。(6号線St-Jacques駅)

　さらに5号線Quai de Rapee駅にも駅舎があります。この駅はトンネルの間にある半地下構造でホームと線路は掘り下げられたところにあります。駅舎はホームよりも高い位置にあるのですが，ホームへの通路は線路の下をもぐるように設置されており，Place d'Italie方面のホームに行くには長めの階段を登る必要があります。13号線St-Denis支線の終着駅であるSt-Denis-Universite駅は郊外へのバスが発着する大きなバスターミナルが併設されており，札幌地下鉄の新さっぽろ駅のような感じです。この駅はホームは地下にあるものの，地上には大きな駅舎があり，他のメトロの駅とはちょっと違う感じです。

左：外観にはそれほど特徴はない。（5号線Quai de la Rapee駅）
右：三角屋根の立派な駅舎。（13号線St-Denis-Universite駅）

　2008年に開業した13号線の延伸部分の2駅はこれまでの駅の作りとはちょっと違います。交差点の１つの角に大きな駅舎が設けられ，コンコースと改札口があり，そこから大きな階段，エスカレーターでホームに降りて行く方式になっています。これまでの駅とは違い，複数の入り口は設けられず，大きな一つの入り口に集約されています。駅舎内には窓口と券売機の他，改札内にトイレも設けられ，切符を裏返して入り口脇のセンサーに通すと，ドアが開く仕組みになっています。これらの駅にはエレベーターも設けられ，地上からホームまでバリアフリーの移動ができるようになりました。

左：交差点の一角に大きな駅舎を備える。（13号線Les Courtilles駅）
中：階段からホームを望む。それほど混雑する駅ではないと思うが，乗車目標が描かれている。（13号線Les Agnettes駅）
右：通常は終点駅を表記する中，Parisという表記も独特のもの。（13号線Les Agnettes駅）

　12号線のLamarck Caulaincourt駅はパリ北部モンマルトルの丘にあり，周辺は坂が多くなっています。そして，この駅の入口は階段に挟まれた形になっています。通りからは奥まったところに入口があるため道路からはわかりにくく，先にご紹介した矢印付きの赤サインが設置されています。一方，メトロ4路線が乗り入れるSt-Lazare駅は大きなドーム型の入口があります。この入口は 14号線が開業したときに造られた入口で，駅前のこの付近にこの入口しかなく，そのため大きな入口になっているようです。この入口の下は地下深くまでエスカレーターが重なるよう設置されており，各線ホームへの通路へとつながっています。

左：階段の間にある入口。周辺は坂が多い。(12号線Lamarck Caulaincourt駅)
右：斬新なドーム型入口。(3･12･13･14号線St-Lazare駅）

　あと，9号線のRobespierre駅はホームの前後２か所ある入口の両方が独立した建物入口です。片方の入口は三角の庇にL字型の赤サインが取り付けられており，もう一方は横長の赤サインが取り付けられており，東京などの地下鉄入口と雰囲気はかなり似ています。双方とも通りの建物と同じ並びにありますが，入口だけ独立した作りになっています。この駅周辺は商店が建ち並び，通りからはメトロの入口が探しにくいのが難点でしょうか。

左：三角の庇とＬ字型サインが特徴が。(9号線Robespierre駅)
右：札幌地下鉄にもありそうな感じの入口。(9号線Robespierre駅）

　最後にご紹介するのは，1･7号線のPalais Royal Musee du Louvre駅にある入口です。透明の玉で装飾されたこの入口は他の入口とは全く違うとても派手なものです。「Ｍ」サインなどもなく，階段上部にメトロと小さく書かれているだけです。ですから最初はメトロの入口とは思わないかもしれません。

左：派手な入口。とても入口とは思えない。(1･7号線Palais Royal Musee du Louvre駅)
中：階段から見上げるとこんな感じ。

駅の紹介(入口)

参考資料：
松村美與子『パリメトロ物語』2000。
Brian Hardy『Paris Metro Handbook』1999（英語）。
Jean Tricoire『Un Siecle de Metro en 14 Lignes』2004（フランス語）。
Jean-Paul Ladril『Carnet de Paris en Metro』2005（フランス語）。
『METRO2003』http://www.metro2003.com/。
RATPウェブサイトhttp://www.ratp.fr（フランス語）。

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2016/3/17更新